帚木
君は、いかにたばかりなさむと、またおさなきをうしろめたくまちふし給へるに、ふようなるよしをきこゆれば、あさましくめづらかなりける心のほどを、身もいとはづかしくこそなりぬれと、いと/\おしき御けしき也。とばかりものものたまはず。いたくうめきてうしとおぼしたり。
はゝき木の心をしらでその原のみちにあやなくまどひぬるかな
きこえん方こそなけれとの給へり、女も、さすがにまどろまざりければ、
かずならぬふせ屋におふる名のうさにあるにもあらずきゆるはゝ木ゝ
と聞こえたり。こぎみ、いと/\おしさに、ねぶたくもあらでまどひありくを、人あやしとみるらんとわび給ふ。
第十一 戀歌一
平定文家歌合に 坂上是則
その原やふせやに生ふる帚木のありとは見えて逢はぬ君かな
君は、いかにたばかりなさむと、またおさなきをうしろめたくまちふし給へるに、ふようなるよしをきこゆれば、あさましくめづらかなりける心のほどを、身もいとはづかしくこそなりぬれと、いと/\おしき御けしき也。とばかりものものたまはず。いたくうめきてうしとおぼしたり。
はゝき木の心をしらでその原のみちにあやなくまどひぬるかな
きこえん方こそなけれとの給へり、女も、さすがにまどろまざりければ、
かずならぬふせ屋におふる名のうさにあるにもあらずきゆるはゝ木ゝ
と聞こえたり。こぎみ、いと/\おしさに、ねぶたくもあらでまどひありくを、人あやしとみるらんとわび給ふ。
第十一 戀歌一
平定文家歌合に 坂上是則
その原やふせやに生ふる帚木のありとは見えて逢はぬ君かな