しもがれのあさちがもとのかる
かやのみだれてものをおもふこ
ろかな
まくらのみうくとおもひしなみ
だがはいまはわがみのしづむな
りけり
かづきえぬなみだがいそのあは
びゆゑうみてふうみはかづき
つくしつ
かたいとをこなたかなたにより
かけてあはずはなにをたまのを
にせむ
たにふかみいはまをたぎつ山川
のおとにのみやはきゝわたるべき
こひしさのかぎりだにあふ世
是則集
霜枯れの浅茅がもとの苅萱の乱れて物を思ふころかな
新古今和歌集 巻第十五 恋歌五
題知らず 坂上是則
枕のみ浮くと思ひしなみだ川いまはわが身の沈むなりけり
よみ:まくらのみうくとおもいしなみだがわいまはわがみのしずむなりけり 隆 隠削
意味:悲しみで枕が浮くだけと思っていた川のような大量の涙は、今は我が身が沈むだけになってしまった。
是則集
かつきえぬ涙が礒の鮑ゆゑ海てふ海は潜(かづ)き尽くしつ
備考:古今和歌六帖、夫木集(読み人知らず)では、「かづきいでぬ」。
古今和歌集巻第十一 恋歌一 題知らず 読み人知らず
片糸をこなたかなたに撚りかけてあはずは何を玉の緒にせむ
是則集
谷深み岩間をせばみ山川の音にのみやは聞き渡るべき
続古今集巻第十四 恋歌四 是則
恋ひしさの限りだにあふ世(なりせは年経て物は思はざらまし)