左 ふけヰの
藤 うらにゐる
かへら 原 たづ
清 の
ざる 正 などか
べ 天 雲
き 津 井
風 に
新古今和歌集第十八 雜歌下
殿上離れ侍りてよみ侍りける
藤原清正朝臣
天つ風ふけひの浦にゐる鶴のなどか雲居にかへらざるべき
よみ:あまつかぜふけいのうらにいるたづのなどかくもいにかえらざるべき
意味:天からの風が吹く吹飯の浦にいる鶴がどうして高い雲に帰らないはずが無いのだから、天皇の思し召しもめでたい私も宮中に帰る事が出来るはずだ。
備考:公任三十六人撰、俊成三十六人歌合、和漢朗詠集。天暦十年紀伊守に任じられた時の作。清正集によれば、「紀伊守になりてまだ殿上もせざりしに」とあるが、同じく忠見集には壬生忠見が清正に代わって詠んだとある。吹飯の浦は、大阪府岬町深日港を指すと思われるが、和歌山市の吹上の混同と言う説もある。天津風吹から吹飯を導き出している。天は天皇を、鶴は自身を比喩している。
令和3年4月25日 弐點壱/12枚