すしくしてとめる家のとなり
におるものはあさゆふすほき
すかたをはちてへつらひつヽいて
いる。妻子僮僕のうらやめるさま
をみるにも富家の人ないかし
ろなる氣色をきくにもこヽろ
念〃にうこきて時としてやす
からす。もしせはき地におれはちか
く炎上ある時さいをのかるヽ事
(貧)しくして富める家の隣に居るものは、朝夕すぼき姿を恥ぢてへつらいつヽ出で入る。
妻子、僮僕の羨める様を見るにも富家の人をないがしろなる気色を聞くにも、念々に動きて、時として安からず。
もし、狭き地に居れば、近く炎上ある時、災を逃るヽ事
参考 大福光寺本
ツシクシテトメル家ノトナリニヲルモノハアサユフスホキスカタヲハチテヘツラヒツゝイテイル。
妻子僮僕ノウラヤメルサマヲミルニモ福家ノ人ノナイカシロナルケシキヲキクニモ心念々ニウコキテ時トシテヤスカラス。
若セハキ地ニヲレハチカク炎上アル時ソノ災ヲノカルル事