(ウェッブリブログ 2009年07月26日)
山路秋行
一番 左 親經
麋鹿無蹤村葉滿 樵蘇有路峡煙開
右 御製
常磐山秋をしのびて独行く袖の色より鹿や鳴くらん
二番 左持 親經
雲歸巌岫共誰宿 月自家山送我來
右 御製
旅衣けふみかの原露なれぬやどかせ山の秋の夕暮
三番 左持 宗親
眼疲胡雁參雲翅 腸斷巴猿叫月聲
右 俊成卿女
吹きみだる山下風の露のまに秋の哀をおくる月影
四番 左 宗親
碧㵎過來猶碧㵎 紅林行盡又紅林
右 俊成卿女
心さへうつりもゆくか龍田山梢に秋の色を尋ねて
五番 左 行長
鳥路煙均河漢上 竜門水冷洛陽西
右 秀能
かづらきやよそに思ひし嶺の雲を袂に分くる秋の夕暮
六番 左 行長
行人随月過鑪岫 旅客與雲宿碧嵆
右 秀能
しをりしてつらき山とはきかざりきただ此ごろの秋の夕暮
七番 左持 家宣
雁陣過林風物遠 鹿蹄踏葉雨聲幽
右 良平
霧おもき山わけ衣吹きかへてうらになれたる秋風のこゑ
八番 左持 家宣
卷舒深洞白雲夕 管領空山蘿月秋
右 良平
道すがら友なふ月も影たえぬふけやしぬらんさよの中山
九番 左勝 孝範
林館題書紅葉紙 巌扉同宿碧蘿帷
右 長明
と山より野べの朝霧わけかへて雲のいくへに日ぐらしのこゑ
十番 左 孝範
二崤路僻秋雲色 八字山垂曉月眉
右 長明
袖にしも月かかれとは契りおかず涙はしるやうつの山ごえ
十一番 左勝 信定
渓鳥一聲秋霧暗 峡猿群宿暮雲閑
右 業清
片岡のと山が末の淺茅生に夕日がくれの松蟲のこゑ
十二番 左勝 信定
秦呉路遠月猶月 巴蜀境移山又山
右 業清
み山ぢの木の下露にぬれゆけば袖にぞうつる有明の月
十三番 左持 成信
落葉霜深人事少 荒榛露亂鹿蹤多
右 具親
しをりせし誰かはやどをはつ雁のかりにもわけん峰の秋霧
十四番 左持 成信
幽情薊北千山月 行色巴南一嶂雲
右 具親
よはに猶こゆる名のみやたつた山月のさかりの有明の比
十五番 左 宗行
黛色露來連岫曉 鈴聲嵐去故關秋
右勝 行能
と山より雲ゐる嶺にやどとへば秋をこたへて嵐ふくなり
十六番 左勝 宗行
黔陽月滿行人路 隴上風閑遠戎樓
右 行能
あすもこむ契を松にしをりしてけふいなばの峰の秋風