鵜羽 脇能物 世阿弥作
神仏習合による中世日本紀より。勅命により日向国鵜戸の岩屋へ参詣すると、海辺の仮屋に鵜羽を葺いてる海女に出会い、理由を尋ねると、鵜羽葺不合尊の誕生説話を語り、更に勅使が干珠満珠の在る所を聞くと、女は自分が豊玉姫であることを暗示して消える。
岩屋の浦人から岩屋の故事を聞き、松陰で神のお告げを待っていると豊玉姫が現れ、山海増減の満干の玉を讃えて舞い、妙法を願って海中に消える。
前ジテ:海士 後ジテ:豊玉姫の神霊 ツレ:海士 ワキ:勅使 ワキヅレ:随行の朝臣 アイ:鵜戸岩屋の浦人
ワキ 鵜の羽葺き合はせずの謂は委承候ぬ、扨々干珠滿珠の玉のありかはいづくの程にて候ぞ
シテ さむ候玉のありかも有げに候、誠はわれは人間にあらず、暇申て歸るなり
ワキ そも人間にあらずとは、いかなる神の現化ぞと、袖をひかへて尋ぬれば
シテ 終にはそれと白浪の、龍の都は豐かなる、玉の女と思ふべし
ワキ 龍の都は龍宮の名、又豐か成玉の女と、聞くは豐玉姫かとよ
シテ あら恥づかしや白玉か
同 何ぞと人の問ひし時、露と答へて消なまし、なまじゐに顯れて、人の見る目恥づかしや、隔てはあらじ葦垣の、よし名を問はずと神までぞ、唯頼めとよ頼めとよ、玉姫はわれなりと、海上に立つて失せにけり、海上に立ちて失にけり。
白玉か何ぞと人の問ひし時、露と答へて消なまし
巻第八 哀傷歌 851
題しらず 在原業平朝臣
伊勢物語 第六段
白玉か何ぞと人の問ひしとき露とこたへて消なましものを