西山 常建

西山 常建 一身軽舟と為る。 落日西山の際(あい)だ。 常に去帆の影に随(したが)い、 遠く長天の勢いに接す。 物象、余清に帰し、 林巒(らん)、夕麗を分つ。 亭亭、碧流暗し。 日入りて孤霞継ぐ。 洲渚、遠陰映、 湖雲、尚明霽。 林昏して楚色来たり。 岸遠くして荊門閉づ。 夜に至りて転た清逈(けい)。 蕭蕭として北風厲(はげ)し。 沙辺雁鷺泊し、 宿処蒹葭蔽ふ。 円月前浦に逗し、 孤琴又揺曳。 冷然として夜遂に深し。 白露人袂(べい)を沾(うるお)す。 宋中 高適 梁王昔全盛、 賓客復多才。 悠悠たり一千年。 陳迹、惟だ高台のみ。 寂寞として秋草。 悲風、千里来たる。 高適、薛據と、同じく慈恩寺の浮図に登る。 岑参 塔勢、湧出するが如し。 孤高、天宮に聳(そび)ゆ。 登臨、世界を出で、 磴道、虚空に盤(わだか)まる。 突兀(ごつ)として神州を壓(あっ)し、 崢嶸(そうこう)として鬼工の如し。 四角、白日を礙(ささ)え、 七層、蒼穹(そうきゅう)を摩す。 下だし窺ふて高鳥を指し、 俯聴し驚風を聞く。 連山、波濤若(ごと)く、 奔走、東に朝(ちょう)するに似たり。 青松、馳道を夾み、 宮観何ぞ玲瓏たる。 秋色西従り来たり、 蒼然として関中に満つ。 五陵、北原の上、 万古青濛濛(もうもう) 淨理、了に悟るべし。 勝因夙(つと)に宗とする所、 誓って、将に冠を挂(か)け去らんとす。 覚道、無窮を資(たす)く。 幽居 韋應物 貴賤等(しな)異にすと雖ども、 門を出づれば皆営み有り。 独り外物の牽く無し。 此の幽居の情を遂ぐ。 微雨夜来過ぐ。 知らず春草の生ずるを。 青山忽まち已に曙くれば、 鳥雀舎を繞って鳴く。 時に道人と偶し、 或ひは樵者に随って行く。 自から当(まさ)に蹇劣に安んずべし。 誰か世栄を薄んずと謂ふ。