送沈子福之江南 楊柳渡頭行客稀罟師盪槳向臨 圻唯有相思似春色江南江北送 君歸 王維 やうりうととうかうかくまれなりこしかぢをおしてりんきにむかふ。 たゞそうしのしゆんしよくににたるあつて、こうなんこうほくきみをおくつて かへる しんしふくがこうなんにゆくをおくる おうい 江北から江南のかたへゆくなり。ほんかいどうもあろふが今こなたおくるところの渡りは、 ほんかいとうてはないから行客のゆきゝもすくない。罟師は漁人なり。臨圻は川 岸のてはつれなり。漁人が舟をこひて行水をわたすなり。なこりおしさにあとかけ を見のそむなり。さて江南ははるのさいちうで春色のないところはない。わが相思の情はくち でいふしるしない。どこもかも春色のあるを見て、わがしやうのかきりないをおもひ やつてくれちれは、こゝろさきへ身はもとるゆへ、送君帰とはいふなり くはしくは國字解又は箋注掌故等をけみししるへし 沈子福の江南に之(ゆ)くを送る 王維 楊柳の渡頭、行客稀なり。 罟師、槳(かひ)を盪(うご)かし臨圻(りんき)に向かふ。 唯だ相思の春色に似たる有りて、 江南江北、君の帰るを送る。 意訳 楊柳の生えている渡し場の辺、旅人は稀である。 君を乗せた舟は、漁師がオールを漕ぎ、対岸の屈曲した所に向かっている。 ただ、君を思う心は、春一色、 江南江北辺り一面に広がるに似ていて、君が帰るのを送っている。 ※沈子福 不詳。 ※江南 江東という本もある。 ※罟師 漁師。 ※盪 動かす事。 ※槳 ボートのオールに似たもの。 ※臨圻 岸の屈曲したところ。そこを臨む。地名の誤記という説もある。 ※
唐詩選畫本 七言絶句 巻三