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Channel: 新古今和歌集の部屋
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歌論 無名抄 題は意を得るべき事

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題可意得(イ心)事
歌は題のこゝろを能心うべき也。俊頼の髄惱(イ脳)といふ物にぞしるして侍るめる。必まはして讀べき文字中/\まはして○(イは)はわろき(イわろくきこゆる)文字あり。必しも讀す(イそ)へねども(イナシ)をのづからしらるゝ文字もあり。所謂曉天落花雲間郭公海上明月かくのごとくの(イナシ)題は第二の(イナシ)文字必しも(イかならしも)よまず。皆しもの題を讀に具して聞ゆる文字あ(イな)り。又かすかにては(イナシ)いうなる文字あり。是等はをしへならぶべき事に○(イも)あらず。能心得つれば其題を見るにあらは也。○(イ又題の歌は)心ざしをふかく讀べし。たとへば祝事(イナシ)○(イに)は限りなく久しき心をいひ戀にはわりなく淺からぬよしを讀。もしは命にかへて花を惜み家路を忘れて紅葉を尋んごとく其物に心ざしを深く讀べし。古集の歌共のさしも見えぬは歌○(イの)さまよろしきによりて其難(イ躰)をゆるさ(イせ)る也。もろ/\の難ある歌此會尺(イせき)に依て撰入る○(イは)常の事なり。されども(イナシ)彼をば例とすべからず。如何にも歌合などに(イナシ)おなじ程なるにとりては今少も題を深くおもへるをまさるとさだむる也。たとへば説法する人の其佛にむかひて讚嘆するがごとし。但題をば必もてなすべきぞとてふるくよまぬ程の(イナシ)事をば心得べし。假ば時鳥などは山野をたづねありきてきく心をよみ(イむ)鶯ごときは待こゝろをばよめども尋てきくよしいと(イ心をば)よまず。又(イナシ)鹿の音などは聞も(イ物)心すご(イぼそ)く哀なるよしをばよめども待よしをばいとも(イナシ)いはず。かやうの事○(イなど)はことなる秀句など(イナシ)なくば必さるべし。又櫻をば尋ぬれ共(イナシ)柳をばたづねず。初雪など○(イを) ば待心を讀てしぐれ霰など(イナシ)をばまたず。花をば命にかへておしめ(イむといへ)ども紅葉をばさ程には(イナシ)惜まず。此等のちがひめ(イナシ)を心得ねば(イぬは)故實をしらぬやうなり。(イれば)能々古歌の(イナシ)などをも思ひときて歌の程にしたがひてはからふべき事なり。

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