前大僧正慈圓
巻 巻名 前書き 歌
現代語読み 隠岐
第一 春歌上
百首奉りける時
あまのはら富士の煙の春いろの霞になびくあけぼののそら
あまのはらふじのけむりのはるいろのかすみになびくあけぼののそら 隠
故郷花といへるこころを
散り散らず人もたづねぬふるさとの露けき花に春かぜぞ吹く
ちりちらずひともたずねぬふるさとのつゆけきはなにはるかぜぞふく
第三 夏歌
更衣をよみ侍りける
散りはてて花のかげなきこのもとにたつことやすき夏衣かな
ちりはててはなのかげなきこのもとにたつことやすきなつころもかな 隠
五十首歌奉りし時
さつきやみみじかき夜半のうたたねに花橘のそでに涼しき
さつきやみみじかきよわのうたたねにはなたちばなのそでにすずしき 隠
攝政太政大臣家百首歌合に鵜河をよみ侍りける
鵜飼舟あはれとぞ見るもののふのやそ宇治川の夕闇のそら
うかいぶねあわれとぞみるもののふのやそうじがわのゆうやみのそら 隠
五十首歌奉りし時
むすぶ手にかげみだれゆく山の井のあかでも月の傾きにける
むすぶてにかげみたれゆくやまのいのあかでもつきのかたむきにける 隠
夏の歌とてよみ侍りける
雲まよふ夕べに秋をこめながらかぜもほに出でぬ荻のうへかな
くもまようゆうべにあきをこめながらかぜもほにいでぬおぎのうえかな 隠
百首歌奉りし時
夏衣かたへ涼しくなりぬなり夜や更けぬらむゆきあひの空
なつころもかたえすずしくなりぬなりよやふけぬらむゆきあいのそら 隠
第四 秋歌上
題しらず
身にとまる思を荻のうは葉にてこのごろかなし夕ぐれの空
みにとまるおもいをおぎのうわばにてこのごろかなしゆうぐれのそら 隠
おのこども詩を作りて歌に合せ侍りしに山路秋行といふことを
み山路やいつより秋の色ならむ見ざりし雲のゆふぐれの空
みやまじやいつよりあきのいろならむみざりしくものゆうぐれのそら
百首歌奉りし時月の歌に
いつまでかなみだくもらで月は見し秋待ちえても秋ぞ戀しき
いつまでかなみだもくらでつきはみしあきまちえてもあきぞこいしき 隠
百首歌奉りし時秋の歌の中に
ふけゆかばけぶりもあらじしほがまのうらみなはてそ秋の夜の月
ふけゆかばけむりもあらじしおがまのうらみなはてそあきのよのつき 隠
題しらず
憂き身にはながむるかひもなかりけり心に曇る秋の夜の月
うきみにはながむるかいもなかりけりこころにくもるあきのよのつき 隠
和歌所歌合に田家月といふことを
雁の來る伏見の小田に夢覺めて寝ぬ夜の庵に月をみるかな
かりのくるふしみのおだにゆめさめてねぬよのいおにつきをみるかな 隠
第五 秋歌下
千五百番歌合に
鳴く鹿の聲に目ざめてしのぶかな見はてぬ夢の秋の思を
なくしかのこえにめざめてしのぶかなみはてぬゆめのあきのおもいを 隠
攝政太政大臣家の百首歌合に
わきてなど庵守る袖のしをるらむ稻葉にかぎる秋の風かは 1 わきてなどいおもるそでのしおるらむいなばにかぎるあきのかぜかは 隠
題しらず
衣うつおとは枕にすがはらやふしみの夢をいく夜のこしつ
ころもうつおとはまくらにすがはらやふしみのゆめをいくよのこしつ 隠
五十首歌奉りし時月前聞雁といふことを
大江山傾く月のかげさえて鳥羽田の面に落つるかりがね
おおえやまかたぶくつきのかげさえてとばたのおもにおつるかりがね 隠
千五百番歌合に
秋を經てあはれも露もふかくさの里とふものは鶉なりけり
あきをへてあわれもつゆもふかくさのさととうものはうずらなりけり 隠
和歌所にて六首つかうまつりし時秋歌
秋ふかき淡路の島のありあけにかたぶく月をおくる浦かぜ
あきふかきあわじのしあのありあけにかたぶくつきをおくるうらかぜ 隠
暮秋のこころを
長月もいくありあけになりぬらむ淺茅の月のいとどさびゆく
ながつきのいくありあけになりぬらむあさじのつきのいとどさびゆく 隠
第六 冬歌
春日社歌合に落葉といふことをよみ奉りし
木の葉散る宿にかたしく袖の色をありとも知らでゆく嵐かな
このはちるやどのかたしくそでのいろをありともしらでゆくあらしかな 隠
時雨を
やよ時雨もの思ふ袖のなかりせば木の葉の後に何を染めまし
やよしぐれものもうそでのなかりせばこのはのあとになにをそめまし 隠
題しらず
もみぢ葉はおのが染めたる色ぞかしよそげに置ける今朝の霜かな
もみじばはおのがそめたるいろぞかしよそげにおけるけさのしもかな 隠
百首歌中に
霜さゆる山田のくろのむら薄刈る人なしにのこるころかな
しもさゆるやまだのくろのむらすすきかるひとなしにのこるころかな 隠
最勝四天王院の障子に宇治河かきたる所
網代木にいさよふ波の音ふけてひとりや寝ぬる宇治のはし姫
あじろぎにいさよふなみのおとふけてひとりやねぬるうじのはしひめ 隠
題しらず
庭の雪にわが跡つけて出でつるを訪はれにけりと人は見るらむ
にわのゆきにわがあとつけていでつるをとはれにけりとひとやみるらむ 隠
題しらず
ながむればわが山の端に雪しろし都の人よあわれとも見よ
ながむればわがやまのはにゆきしろしみやこのひとぞあわれともみよ 隠
題しらず
年の明けてうき世の夢の醒むべくは暮るとも今日は厭はざらまし
としあけてうきよのゆめのさむべくはくるともきょうはいやはざらまし 隠
第八 哀傷歌
同行なりける人うちつづきはかなくなりにければ思ひ出でてよめる
ふるさとを戀ふる涙やひとり行く友なき山のみちしばの露
ふるさとをこうるなみだやひとりゆくともなきやまのみちしばのつゆ 隠
返し
思ひ出づる折りたく柴と聞くからにたぐひも知らぬ夕煙かな
おもいずるおりたくしばときくからにたぐいもしらぬゆうけむりかな 隠
無常の心を
皆人の知りがほにして知らぬかな必ず死ぬるならひありとは
みなひとのしりがおにしてしらぬかなかならずしぬるならいありとは 隠
無常の心を
昨日見し人はいかにと驚けどなほながき夜の夢にぞありける
きのうみしひとはいかにとおどろけどなおながきよのゆめにぞありける 隠
無常の心を
蓬生にいつか置くべき露の身は今日のゆふぐれ明日のあけぼの
よもぎうにいつかおくべきつゆのみはきょうのゆうぐれあすのあけぼの 隠
無常の心を
我もいつぞあらましかばと身し人を忍ぶとすればいとど添ひ行く
あもいつぞあらましかばとみしひとをしのぶとすればいとどそいゆく 隠
覺快法親王かくれ侍りて周忌のはてに墓所にまかりてよみ侍りける
そこはかと思ひつづけて來て見れば今年の今日も袖は濡れけり
そこはかとおもいつづけてきてみればことしのきょうもそではぬれけり 隠
第十 羇旅歌
旅の歌とてよみ侍りける
東路の夜半のながめを語らなむみやこの山にかかる月かげ
あずまじのよわのながめをかたらなむみやこのやまにかかるつきかげ
詩を歌にあはせ侍りしに山路秋行といふことを
立田山秋行く人の袖を見よ木木のこずゑはしぐれざりけり
たつたやまあきゆくひとのそでをみよきぎのこずえはしぐれざりけり 隠
百首歌奉りし旅歌
さとりゆくまことの道に入りぬれば戀しかるべき故郷もなし
さとりゆくまことのみちにいりぬればこいしかるべきふるさともなし 隠
第十一 戀歌一
百首歌奉りし時よめる
わが戀は松を時雨の染めかねて眞葛が原に風さわぐなり
わがこいはまつをしぐれのそめかねてまくずがはらにかぜさわぐなり 隠
第十三 戀歌三
攝政太政大臣家百首歌合に契戀のこころを
ただ頼めたとへば人のいつはりを重ねてこそは又も恨みめ
ただたのめたとえばひとのいつわりをかさねてこそはまたもうらみめ
第十四 戀歌四
(攝政太政大臣)家百首歌合に
心あらば吹かずもあらなむよひよひに人待つ宿の庭の松風
こころあらばふかずもあらなむよいよいにひとまつやどのにわのまつかぜ
戀の歌とてよみ侍りける
わが戀は庭のむら萩うらがれて人をも身をあきのゆふぐれ
わがこいはにわのむらはぎうらがれてひとをもみをもあきのゆうぐれ 隠
攝政太政大臣家百首歌合に尋戀
心こそゆくへも知らね三輪の山杉のこずゑのゆふぐれの空
こころこそゆくえもしらねみわのやますぎのこずえのゆうぐれのそら 隠
暁戀のこころを
暁のなみだやそらにたぐふらむ袖に落ちくる鐘のおとかな
あかつきのなみだやそらにたぐうらむそでにおちくるかねのおとかな 隠
第十五 戀歌五
水無瀬の戀十五首の歌合に
野邊の露は色もなくてやこぼれつる袖より過ぐる荻の上風
のべのつゆはいろもなくてやこぼれつるそでよりすぐるおぎのうわかぜ 隠
第十六 雜歌上
春頃大乗院より人に遣はしける
見せばやな滋賀の唐崎ふもとなるながらの山の春のけしきを
みせばやなしがのからさきふもとなるながらのやまのはるのけしきに 隠
題しらず
柴の戸に匂はむ花はさもあらばあれ詠めてけりな恨めしの身や
しばのとににおわむはなはさもあらばあれながめてけりなうらめしのみや 隠
五十首歌奉りし時
おのが浪に同じ末葉ぞしをれぬる藤咲く田子のうらめしの身
おのがなみにおなじすえばぞしおれぬるふじさくたごのうらめしのみや 隠
五十首歌奉りしに山家月のこころを
山ざとに月は見るやと人は來ず空ゆく風ぞ木の葉をも訪ふ
やまざとにつきはみるやとひとはこずそらゆくかぜぞこのはをもとう 隠
攝政太政大臣大將に侍りし時月歌五十首よませ侍りけるに
有明の月のゆくへをながめてぞ野寺の鐘は聞くべかりける
ありあけのつきのゆくえをながめてぞのでらのかねはきくべかりける 隠
五十首歌召しし時
秋を經て月をながむる身となれり五十ぢの闇をなに歎くらむ
あきをへてつきをながむるみとなれりいそじのやみをなになげくらむ 隠
和歌所の歌合に海邊月といふことを
和歌の浦に月の出しほのさすままによる啼く鶴の聲ぞかなしき
わかのうらにつきのでしほのさすままによるなくたずのこえぞかなしき 隠
第十七 雜歌中
五十首歌よみて奉りしに
須磨の關夢をとほさぬ波の音を思ひもよらで宿をかりける
すまのせきゆめをとおさぬなみのねをおもいもよらでやどをかりける 隠
題しらず
世の中を心高くもいとふかな富士のけぶりを身の思にて
よのなかをこころたかくもいとうかなふじのけむりをみのおもいにて 隠
五十首歌奉りし時
花ならでただ柴の戸をさして思ふのおくもみ吉野の山
はなならでただしばのとをさしておもふこころのおくもみよしのやま 隠
題しらず
山ざとに獨ながめて思ふかな世に住む人のこころながさを
やまざとにひとりながめておもうかなよにすむひとのこころながさを
題しらず
草の庵をいとひても又いかがせむ露のいのちのかかる限りは
くさのいをいとひてもまたいかがせむつゆのいのちのかかるかぎりは 隠
山家歌數多くよみ侍りけるに
山里に訪ひ來る人のことぐさはこのすまひこそうらやましけれ
やまざとにといくるひとのことぐさはこのすまいこそうらやましけれ
題しらず
岡のべの里のあるじを尋ぬれば人は答へず山おろしの風
おかのべのさとのあるじをたずぬればひとはこたえずやまおろしのかぜ 隠
第十八 雜歌下
五十首歌奉りし時
世の中の晴れゆく空にふる霜のうき身ばかりぞおきどころなき
よのなかのはれゆくそらにふるしものうきみばかりぞおきどころなき 隠
例ならぬ事侍りて無動寺にてよみ侍りける
頼み來しわが古寺の苔の下にいつしか朽ちむ名こそ惜しけれ
たのみこしわがふるでらのこけのしたにいつしかくちむなこそおしけれ 隠
題しらず
思はねど世を背かむといふ人の同じ數にやわれもなりなむ
おもわねどよをそむかむというひとのおなじかずにやわれもなりなむ
述懷のこころをよめる
なにごとを思ふ人ぞと人問はば答へぬさきに袖ぞ濡るべき
なにごとをおもうひとぞとひととわばこたえぬさきにそでぞぬるべき 隠
述懷のこころをよめる
いたづらに過ぎにし事や歎かれむうけがたき身の夕暮の空
いたずらにすぎにしことやなげかれむうけがたきみのゆうぐれのそら 隠
述懷のこころをよめる
うち絶えて世に經る身にはあらねどもあらぬ筋にも罪ぞ悲しき
うちたえてよにふるみにはあらねどもあらぬすじにもつみぞかなしき
和歌所にて述懷のこころを
山里に契りし庵や荒れぬらむ待たれむとだに思はざりしを
やまざとにちぎしりいおやあれぬらむまたれむとだにおもわざりしを 隠
五十首歌の中に
思ふことなど問ふ人のなかるらむ仰げば空に月ぞさやけき
おもうことなどとうひとのなかるらむあおげばそらにつきぞさやけき 隠
五十首歌の中に
いかにして今まで世には有明のつきせぬものを厭ふこころは
いかにしていままでよにはありあけのつきせぬものをいとうこころは 隠
西行法師山里より罷り出でて昔出家し侍りしその月日にあひ當りて侍るなど申したりける返事に
うき世出でし月日の影の廻り來てかはらぬ道をまた照らすらむ
うきよいでしつきひのかげのめぐりきてかわらぬみちをまたてらすらむ 隠
題しらず
世の中を今はの心つくからに過ぎにし方ぞいとど戀しき
よのなかをいまわのこころつくからにすぎにしかたぞいとどこいしき 隠
題しらず
世を厭ふ心の深くなるままに過ぐる月日をうち數へつつ
よをいとうこころのふかくなるままにすぐるつきひをうちかぞえつつ 隠
題しらず
一方に思ひとりにし心にはなほ背かるる身をいかにせむ
ひとかたにおもいとりにしこころにはなおそむかるるみをいかにせむ 隠
題しらず
何故にこの世を深く厭ふぞと人の問へかしやすくこたえむ
なにゆえにこのよをふかくいとうぞとひとのとえかしやすくこたえむ
題しらず
思ふべきわが後の世はあるか無きか無ければこそは此の世には住め
おもうべきわがのちのよはあるかなきかなければこそはこのよにはすめ 隠
百首歌奉りしに
いつかわれみ山の里の寂しきにあるじとなりて人に問はれむ
いつかわれみやまのさとのさびしきにあるじとなりてひとにとわれむ 隠
第十九 神祗歌
神祇歌とてよみ侍りける
やはらぐる光にあまる影なれや五十鈴河原の秋の夜の月
やわらぐるひかりにあまるかげなれやいすずかわらのあきのよのつき 隠
十首歌合の中に神祗をよめる
君を祈るこころの色を人問はばただすの宮のあけの玉垣
きみをいのるこころのいろをひととわばただすのみやのあけのたまがき 隠
最勝四天王院障子に小鹽山かきたる所を
小鹽山神のしるしをまつの葉に契りし色はかへるものかは
おしおやまかみのしるしをまつのはにちぎりしいろはかえるものかは 隠
日吉社に奉りける歌の中にニ宮を
やはらぐる影ぞふもとに雲なき本のひかりは峯に澄めども
やわらぐるかげぞふもとにくもりなきもとのひかりはみねにすめども 隠
懷述のこころを
わがたのむ七のやしろの木綿襷かけても六の道にかへすな
わがたのむななのやしろのゆうだすきかけてもむつのみちにかえすな 隠
懷述のこころを
おしなべて日吉の影はくもらぬに涙あやしき昨日けふかな
おしなべてひよしのかげはくもらぬになみだあやしききのうきょうかな 隠
懷述のこころを
もろ人のねがひをみつの濱風にこころ涼しきしでの音かな
もろひとのねがいをみつのはまかぜにこころすずしきしでのおとかな 隠
北野にてよみて侍りける
覺めぬれば思ひあはせて音をぞ泣く心づくしのいにしへの夢
さめぬればおもいあわせておとをぞなくこころづくしのいにしえのゆめ 隠
第二十 釋教歌
述懷の歌の中に
願はくはしばし闇路にやすらひてかかげやせまし法の燈火
ねがわくはしばしやみじにやすらいてかかげやせましのりのともしび 隠
述懷の歌の中に
説くみ法きくの白露夜は置きてつとめて消えむ事をしぞ思ふ
とくみのりきくのしらつゆよはおきてつとめてきえむことをしぞもう 隠
述懷の歌の中に
極楽へまだわが心ゆきつかずひつじの歩みしばしとどまれ
ごくらくへまだわがこころゆきつかずひつじのあゆみしばしとどまれ 隠
法華經二十八品歌よみ侍りけるに方便品唯有一乗法のこころを
いづくにもわが法ならぬ法やあると空吹く風に問へど答へぬ
いずくにもわがのりならぬのりやあるとそらふくかぜにとえどこたえず 隠
法華經二十八品歌よみ侍りけるに化城喩品化作大城郭のこころを
思ふなようき世の中を出で果てて宿る奥にも宿はありけり
おもうなようきよのなかをいではててやどるおくにもやどはありけり 隠
法華經二十八品歌よみ侍りけるに分別功德品惑住不退地のこころを
鷲の山今日聞く法の道ならでかへらぬ宿に行く人ぞなき
わしのやまきょうきくのりのみちならでかえらぬやどにゆくひとぞなき 隠
法華經二十八品歌よみ侍りけるに普門品心念不空過のこころを
おしなべてむなしき空とおもひしに藤咲きぬれば紫の雲
おしなべてむなしきそらとおもいしにふじさきぬればむらさきのくも 隠
五百弟子品内秘菩薩行のこころを
いにしへの鹿鳴く野邊のいほりにも心の月はくもらざりけり
いにしえのしかなくのべのいおりにもこころのつきはくもらざりけり 隠
巻 巻名 前書き 歌
現代語読み 隠岐
第一 春歌上
百首奉りける時
あまのはら富士の煙の春いろの霞になびくあけぼののそら
あまのはらふじのけむりのはるいろのかすみになびくあけぼののそら 隠
故郷花といへるこころを
散り散らず人もたづねぬふるさとの露けき花に春かぜぞ吹く
ちりちらずひともたずねぬふるさとのつゆけきはなにはるかぜぞふく
第三 夏歌
更衣をよみ侍りける
散りはてて花のかげなきこのもとにたつことやすき夏衣かな
ちりはててはなのかげなきこのもとにたつことやすきなつころもかな 隠
五十首歌奉りし時
さつきやみみじかき夜半のうたたねに花橘のそでに涼しき
さつきやみみじかきよわのうたたねにはなたちばなのそでにすずしき 隠
攝政太政大臣家百首歌合に鵜河をよみ侍りける
鵜飼舟あはれとぞ見るもののふのやそ宇治川の夕闇のそら
うかいぶねあわれとぞみるもののふのやそうじがわのゆうやみのそら 隠
五十首歌奉りし時
むすぶ手にかげみだれゆく山の井のあかでも月の傾きにける
むすぶてにかげみたれゆくやまのいのあかでもつきのかたむきにける 隠
夏の歌とてよみ侍りける
雲まよふ夕べに秋をこめながらかぜもほに出でぬ荻のうへかな
くもまようゆうべにあきをこめながらかぜもほにいでぬおぎのうえかな 隠
百首歌奉りし時
夏衣かたへ涼しくなりぬなり夜や更けぬらむゆきあひの空
なつころもかたえすずしくなりぬなりよやふけぬらむゆきあいのそら 隠
第四 秋歌上
題しらず
身にとまる思を荻のうは葉にてこのごろかなし夕ぐれの空
みにとまるおもいをおぎのうわばにてこのごろかなしゆうぐれのそら 隠
おのこども詩を作りて歌に合せ侍りしに山路秋行といふことを
み山路やいつより秋の色ならむ見ざりし雲のゆふぐれの空
みやまじやいつよりあきのいろならむみざりしくものゆうぐれのそら
百首歌奉りし時月の歌に
いつまでかなみだくもらで月は見し秋待ちえても秋ぞ戀しき
いつまでかなみだもくらでつきはみしあきまちえてもあきぞこいしき 隠
百首歌奉りし時秋の歌の中に
ふけゆかばけぶりもあらじしほがまのうらみなはてそ秋の夜の月
ふけゆかばけむりもあらじしおがまのうらみなはてそあきのよのつき 隠
題しらず
憂き身にはながむるかひもなかりけり心に曇る秋の夜の月
うきみにはながむるかいもなかりけりこころにくもるあきのよのつき 隠
和歌所歌合に田家月といふことを
雁の來る伏見の小田に夢覺めて寝ぬ夜の庵に月をみるかな
かりのくるふしみのおだにゆめさめてねぬよのいおにつきをみるかな 隠
第五 秋歌下
千五百番歌合に
鳴く鹿の聲に目ざめてしのぶかな見はてぬ夢の秋の思を
なくしかのこえにめざめてしのぶかなみはてぬゆめのあきのおもいを 隠
攝政太政大臣家の百首歌合に
わきてなど庵守る袖のしをるらむ稻葉にかぎる秋の風かは 1 わきてなどいおもるそでのしおるらむいなばにかぎるあきのかぜかは 隠
題しらず
衣うつおとは枕にすがはらやふしみの夢をいく夜のこしつ
ころもうつおとはまくらにすがはらやふしみのゆめをいくよのこしつ 隠
五十首歌奉りし時月前聞雁といふことを
大江山傾く月のかげさえて鳥羽田の面に落つるかりがね
おおえやまかたぶくつきのかげさえてとばたのおもにおつるかりがね 隠
千五百番歌合に
秋を經てあはれも露もふかくさの里とふものは鶉なりけり
あきをへてあわれもつゆもふかくさのさととうものはうずらなりけり 隠
和歌所にて六首つかうまつりし時秋歌
秋ふかき淡路の島のありあけにかたぶく月をおくる浦かぜ
あきふかきあわじのしあのありあけにかたぶくつきをおくるうらかぜ 隠
暮秋のこころを
長月もいくありあけになりぬらむ淺茅の月のいとどさびゆく
ながつきのいくありあけになりぬらむあさじのつきのいとどさびゆく 隠
第六 冬歌
春日社歌合に落葉といふことをよみ奉りし
木の葉散る宿にかたしく袖の色をありとも知らでゆく嵐かな
このはちるやどのかたしくそでのいろをありともしらでゆくあらしかな 隠
時雨を
やよ時雨もの思ふ袖のなかりせば木の葉の後に何を染めまし
やよしぐれものもうそでのなかりせばこのはのあとになにをそめまし 隠
題しらず
もみぢ葉はおのが染めたる色ぞかしよそげに置ける今朝の霜かな
もみじばはおのがそめたるいろぞかしよそげにおけるけさのしもかな 隠
百首歌中に
霜さゆる山田のくろのむら薄刈る人なしにのこるころかな
しもさゆるやまだのくろのむらすすきかるひとなしにのこるころかな 隠
最勝四天王院の障子に宇治河かきたる所
網代木にいさよふ波の音ふけてひとりや寝ぬる宇治のはし姫
あじろぎにいさよふなみのおとふけてひとりやねぬるうじのはしひめ 隠
題しらず
庭の雪にわが跡つけて出でつるを訪はれにけりと人は見るらむ
にわのゆきにわがあとつけていでつるをとはれにけりとひとやみるらむ 隠
題しらず
ながむればわが山の端に雪しろし都の人よあわれとも見よ
ながむればわがやまのはにゆきしろしみやこのひとぞあわれともみよ 隠
題しらず
年の明けてうき世の夢の醒むべくは暮るとも今日は厭はざらまし
としあけてうきよのゆめのさむべくはくるともきょうはいやはざらまし 隠
第八 哀傷歌
同行なりける人うちつづきはかなくなりにければ思ひ出でてよめる
ふるさとを戀ふる涙やひとり行く友なき山のみちしばの露
ふるさとをこうるなみだやひとりゆくともなきやまのみちしばのつゆ 隠
返し
思ひ出づる折りたく柴と聞くからにたぐひも知らぬ夕煙かな
おもいずるおりたくしばときくからにたぐいもしらぬゆうけむりかな 隠
無常の心を
皆人の知りがほにして知らぬかな必ず死ぬるならひありとは
みなひとのしりがおにしてしらぬかなかならずしぬるならいありとは 隠
無常の心を
昨日見し人はいかにと驚けどなほながき夜の夢にぞありける
きのうみしひとはいかにとおどろけどなおながきよのゆめにぞありける 隠
無常の心を
蓬生にいつか置くべき露の身は今日のゆふぐれ明日のあけぼの
よもぎうにいつかおくべきつゆのみはきょうのゆうぐれあすのあけぼの 隠
無常の心を
我もいつぞあらましかばと身し人を忍ぶとすればいとど添ひ行く
あもいつぞあらましかばとみしひとをしのぶとすればいとどそいゆく 隠
覺快法親王かくれ侍りて周忌のはてに墓所にまかりてよみ侍りける
そこはかと思ひつづけて來て見れば今年の今日も袖は濡れけり
そこはかとおもいつづけてきてみればことしのきょうもそではぬれけり 隠
第十 羇旅歌
旅の歌とてよみ侍りける
東路の夜半のながめを語らなむみやこの山にかかる月かげ
あずまじのよわのながめをかたらなむみやこのやまにかかるつきかげ
詩を歌にあはせ侍りしに山路秋行といふことを
立田山秋行く人の袖を見よ木木のこずゑはしぐれざりけり
たつたやまあきゆくひとのそでをみよきぎのこずえはしぐれざりけり 隠
百首歌奉りし旅歌
さとりゆくまことの道に入りぬれば戀しかるべき故郷もなし
さとりゆくまことのみちにいりぬればこいしかるべきふるさともなし 隠
第十一 戀歌一
百首歌奉りし時よめる
わが戀は松を時雨の染めかねて眞葛が原に風さわぐなり
わがこいはまつをしぐれのそめかねてまくずがはらにかぜさわぐなり 隠
第十三 戀歌三
攝政太政大臣家百首歌合に契戀のこころを
ただ頼めたとへば人のいつはりを重ねてこそは又も恨みめ
ただたのめたとえばひとのいつわりをかさねてこそはまたもうらみめ
第十四 戀歌四
(攝政太政大臣)家百首歌合に
心あらば吹かずもあらなむよひよひに人待つ宿の庭の松風
こころあらばふかずもあらなむよいよいにひとまつやどのにわのまつかぜ
戀の歌とてよみ侍りける
わが戀は庭のむら萩うらがれて人をも身をあきのゆふぐれ
わがこいはにわのむらはぎうらがれてひとをもみをもあきのゆうぐれ 隠
攝政太政大臣家百首歌合に尋戀
心こそゆくへも知らね三輪の山杉のこずゑのゆふぐれの空
こころこそゆくえもしらねみわのやますぎのこずえのゆうぐれのそら 隠
暁戀のこころを
暁のなみだやそらにたぐふらむ袖に落ちくる鐘のおとかな
あかつきのなみだやそらにたぐうらむそでにおちくるかねのおとかな 隠
第十五 戀歌五
水無瀬の戀十五首の歌合に
野邊の露は色もなくてやこぼれつる袖より過ぐる荻の上風
のべのつゆはいろもなくてやこぼれつるそでよりすぐるおぎのうわかぜ 隠
第十六 雜歌上
春頃大乗院より人に遣はしける
見せばやな滋賀の唐崎ふもとなるながらの山の春のけしきを
みせばやなしがのからさきふもとなるながらのやまのはるのけしきに 隠
題しらず
柴の戸に匂はむ花はさもあらばあれ詠めてけりな恨めしの身や
しばのとににおわむはなはさもあらばあれながめてけりなうらめしのみや 隠
五十首歌奉りし時
おのが浪に同じ末葉ぞしをれぬる藤咲く田子のうらめしの身
おのがなみにおなじすえばぞしおれぬるふじさくたごのうらめしのみや 隠
五十首歌奉りしに山家月のこころを
山ざとに月は見るやと人は來ず空ゆく風ぞ木の葉をも訪ふ
やまざとにつきはみるやとひとはこずそらゆくかぜぞこのはをもとう 隠
攝政太政大臣大將に侍りし時月歌五十首よませ侍りけるに
有明の月のゆくへをながめてぞ野寺の鐘は聞くべかりける
ありあけのつきのゆくえをながめてぞのでらのかねはきくべかりける 隠
五十首歌召しし時
秋を經て月をながむる身となれり五十ぢの闇をなに歎くらむ
あきをへてつきをながむるみとなれりいそじのやみをなになげくらむ 隠
和歌所の歌合に海邊月といふことを
和歌の浦に月の出しほのさすままによる啼く鶴の聲ぞかなしき
わかのうらにつきのでしほのさすままによるなくたずのこえぞかなしき 隠
第十七 雜歌中
五十首歌よみて奉りしに
須磨の關夢をとほさぬ波の音を思ひもよらで宿をかりける
すまのせきゆめをとおさぬなみのねをおもいもよらでやどをかりける 隠
題しらず
世の中を心高くもいとふかな富士のけぶりを身の思にて
よのなかをこころたかくもいとうかなふじのけむりをみのおもいにて 隠
五十首歌奉りし時
花ならでただ柴の戸をさして思ふのおくもみ吉野の山
はなならでただしばのとをさしておもふこころのおくもみよしのやま 隠
題しらず
山ざとに獨ながめて思ふかな世に住む人のこころながさを
やまざとにひとりながめておもうかなよにすむひとのこころながさを
題しらず
草の庵をいとひても又いかがせむ露のいのちのかかる限りは
くさのいをいとひてもまたいかがせむつゆのいのちのかかるかぎりは 隠
山家歌數多くよみ侍りけるに
山里に訪ひ來る人のことぐさはこのすまひこそうらやましけれ
やまざとにといくるひとのことぐさはこのすまいこそうらやましけれ
題しらず
岡のべの里のあるじを尋ぬれば人は答へず山おろしの風
おかのべのさとのあるじをたずぬればひとはこたえずやまおろしのかぜ 隠
第十八 雜歌下
五十首歌奉りし時
世の中の晴れゆく空にふる霜のうき身ばかりぞおきどころなき
よのなかのはれゆくそらにふるしものうきみばかりぞおきどころなき 隠
例ならぬ事侍りて無動寺にてよみ侍りける
頼み來しわが古寺の苔の下にいつしか朽ちむ名こそ惜しけれ
たのみこしわがふるでらのこけのしたにいつしかくちむなこそおしけれ 隠
題しらず
思はねど世を背かむといふ人の同じ數にやわれもなりなむ
おもわねどよをそむかむというひとのおなじかずにやわれもなりなむ
述懷のこころをよめる
なにごとを思ふ人ぞと人問はば答へぬさきに袖ぞ濡るべき
なにごとをおもうひとぞとひととわばこたえぬさきにそでぞぬるべき 隠
述懷のこころをよめる
いたづらに過ぎにし事や歎かれむうけがたき身の夕暮の空
いたずらにすぎにしことやなげかれむうけがたきみのゆうぐれのそら 隠
述懷のこころをよめる
うち絶えて世に經る身にはあらねどもあらぬ筋にも罪ぞ悲しき
うちたえてよにふるみにはあらねどもあらぬすじにもつみぞかなしき
和歌所にて述懷のこころを
山里に契りし庵や荒れぬらむ待たれむとだに思はざりしを
やまざとにちぎしりいおやあれぬらむまたれむとだにおもわざりしを 隠
五十首歌の中に
思ふことなど問ふ人のなかるらむ仰げば空に月ぞさやけき
おもうことなどとうひとのなかるらむあおげばそらにつきぞさやけき 隠
五十首歌の中に
いかにして今まで世には有明のつきせぬものを厭ふこころは
いかにしていままでよにはありあけのつきせぬものをいとうこころは 隠
西行法師山里より罷り出でて昔出家し侍りしその月日にあひ當りて侍るなど申したりける返事に
うき世出でし月日の影の廻り來てかはらぬ道をまた照らすらむ
うきよいでしつきひのかげのめぐりきてかわらぬみちをまたてらすらむ 隠
題しらず
世の中を今はの心つくからに過ぎにし方ぞいとど戀しき
よのなかをいまわのこころつくからにすぎにしかたぞいとどこいしき 隠
題しらず
世を厭ふ心の深くなるままに過ぐる月日をうち數へつつ
よをいとうこころのふかくなるままにすぐるつきひをうちかぞえつつ 隠
題しらず
一方に思ひとりにし心にはなほ背かるる身をいかにせむ
ひとかたにおもいとりにしこころにはなおそむかるるみをいかにせむ 隠
題しらず
何故にこの世を深く厭ふぞと人の問へかしやすくこたえむ
なにゆえにこのよをふかくいとうぞとひとのとえかしやすくこたえむ
題しらず
思ふべきわが後の世はあるか無きか無ければこそは此の世には住め
おもうべきわがのちのよはあるかなきかなければこそはこのよにはすめ 隠
百首歌奉りしに
いつかわれみ山の里の寂しきにあるじとなりて人に問はれむ
いつかわれみやまのさとのさびしきにあるじとなりてひとにとわれむ 隠
第十九 神祗歌
神祇歌とてよみ侍りける
やはらぐる光にあまる影なれや五十鈴河原の秋の夜の月
やわらぐるひかりにあまるかげなれやいすずかわらのあきのよのつき 隠
十首歌合の中に神祗をよめる
君を祈るこころの色を人問はばただすの宮のあけの玉垣
きみをいのるこころのいろをひととわばただすのみやのあけのたまがき 隠
最勝四天王院障子に小鹽山かきたる所を
小鹽山神のしるしをまつの葉に契りし色はかへるものかは
おしおやまかみのしるしをまつのはにちぎりしいろはかえるものかは 隠
日吉社に奉りける歌の中にニ宮を
やはらぐる影ぞふもとに雲なき本のひかりは峯に澄めども
やわらぐるかげぞふもとにくもりなきもとのひかりはみねにすめども 隠
懷述のこころを
わがたのむ七のやしろの木綿襷かけても六の道にかへすな
わがたのむななのやしろのゆうだすきかけてもむつのみちにかえすな 隠
懷述のこころを
おしなべて日吉の影はくもらぬに涙あやしき昨日けふかな
おしなべてひよしのかげはくもらぬになみだあやしききのうきょうかな 隠
懷述のこころを
もろ人のねがひをみつの濱風にこころ涼しきしでの音かな
もろひとのねがいをみつのはまかぜにこころすずしきしでのおとかな 隠
北野にてよみて侍りける
覺めぬれば思ひあはせて音をぞ泣く心づくしのいにしへの夢
さめぬればおもいあわせておとをぞなくこころづくしのいにしえのゆめ 隠
第二十 釋教歌
述懷の歌の中に
願はくはしばし闇路にやすらひてかかげやせまし法の燈火
ねがわくはしばしやみじにやすらいてかかげやせましのりのともしび 隠
述懷の歌の中に
説くみ法きくの白露夜は置きてつとめて消えむ事をしぞ思ふ
とくみのりきくのしらつゆよはおきてつとめてきえむことをしぞもう 隠
述懷の歌の中に
極楽へまだわが心ゆきつかずひつじの歩みしばしとどまれ
ごくらくへまだわがこころゆきつかずひつじのあゆみしばしとどまれ 隠
法華經二十八品歌よみ侍りけるに方便品唯有一乗法のこころを
いづくにもわが法ならぬ法やあると空吹く風に問へど答へぬ
いずくにもわがのりならぬのりやあるとそらふくかぜにとえどこたえず 隠
法華經二十八品歌よみ侍りけるに化城喩品化作大城郭のこころを
思ふなようき世の中を出で果てて宿る奥にも宿はありけり
おもうなようきよのなかをいではててやどるおくにもやどはありけり 隠
法華經二十八品歌よみ侍りけるに分別功德品惑住不退地のこころを
鷲の山今日聞く法の道ならでかへらぬ宿に行く人ぞなき
わしのやまきょうきくのりのみちならでかえらぬやどにゆくひとぞなき 隠
法華經二十八品歌よみ侍りけるに普門品心念不空過のこころを
おしなべてむなしき空とおもひしに藤咲きぬれば紫の雲
おしなべてむなしきそらとおもいしにふじさきぬればむらさきのくも 隠
五百弟子品内秘菩薩行のこころを
いにしへの鹿鳴く野邊のいほりにも心の月はくもらざりけり
いにしえのしかなくのべのいおりにもこころのつきはくもらざりけり 隠