明月記 元久二年三月
十八日。天晴る。巳の時許りに和歌所に参ず。家隆〃〃、具親、雅経、宗宣等沙汰す。少々之を校す。人々未だ参ぜざるの前、清範を以て、日吉の御製又二首入れらるるの由、仰せ事有り。計らひ申すべしと云々。所存を申し入れる。又春の部、桜の雪(吉野山)の御製出すべき由、仰せ事有り。此の御製殊に珍重、更に出さるべからざる由申す。勅許あり。向殿に渡りおはしますの後、退出す。密々小童を相具し、法勝寺に向ふ(事甚だ穏やかならず。浄衣を著す。眼を養ふためなり)。艮の方を歴覧するの処、青侍等来たりて云ふ、兵衛佐、兵庫頭相伴ふべき由、譴責す。忠弘を以て密々に要事あり。即ち白川の方に出づるの由、示し送る。是より先、総州、藤少将、清範等、軒を連ね西の大門に在りと云々。両人又来たる。遁るる能はず。浄衣ながら、其の列に加はる。甚だ以て不便なり。粟田讃岐守(兼房)、重服にて白川の花を見る。時人、之を難ず。耻しく思ふこと極まり無し。相共に歴覧し、日入りて列座す。九重の塔西方の花の下にて、三首の題を以て歌を詠む。最栄法橋、招かれ出で来たりて、加はる。夜に入り、松明を以て歌を読み上ぐ(清範)。又聊か坏有り。郎に分散す。猶々傍難あるか。
十八日。天晴る。巳の時許りに和歌所に参ず。家隆〃〃、具親、雅経、宗宣等沙汰す。少々之を校す。人々未だ参ぜざるの前、清範を以て、日吉の御製又二首入れらるるの由、仰せ事有り。計らひ申すべしと云々。所存を申し入れる。又春の部、桜の雪(吉野山)の御製出すべき由、仰せ事有り。此の御製殊に珍重、更に出さるべからざる由申す。勅許あり。向殿に渡りおはしますの後、退出す。密々小童を相具し、法勝寺に向ふ(事甚だ穏やかならず。浄衣を著す。眼を養ふためなり)。艮の方を歴覧するの処、青侍等来たりて云ふ、兵衛佐、兵庫頭相伴ふべき由、譴責す。忠弘を以て密々に要事あり。即ち白川の方に出づるの由、示し送る。是より先、総州、藤少将、清範等、軒を連ね西の大門に在りと云々。両人又来たる。遁るる能はず。浄衣ながら、其の列に加はる。甚だ以て不便なり。粟田讃岐守(兼房)、重服にて白川の花を見る。時人、之を難ず。耻しく思ふこと極まり無し。相共に歴覧し、日入りて列座す。九重の塔西方の花の下にて、三首の題を以て歌を詠む。最栄法橋、招かれ出で来たりて、加はる。夜に入り、松明を以て歌を読み上ぐ(清範)。又聊か坏有り。郎に分散す。猶々傍難あるか。