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Channel: 新古今和歌集の部屋
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伊勢物語絵詞 狩の使い 蔵書

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伊勢物語繪詞

君や來し
   われや
  行けん
   思
夢   ほへ
 か   ず
 うつゝ
   か
 ねてか
  さめて
    か

かきくらす
 こゝろの
  やみに
まどひ
 にき

 うつゝ
  とは
こよひ
さだ
  め
   よ

狩の使
むかし、男ありけり。その男、伊勢の国に狩の使に行きけるに、かの伊勢の 斎宮なりける人の親、
「常の使よりは、この人よくいたはれ」
といひやれりければ、親の言なりければ、いとねむごろにいたはりけり。朝には狩にいだしたててやり、夕さりはかへりつつ、そこに来させけり。かくて、ねむごろにいたつきけり。二日といふ夜、男、われて
「あはむ」といふ。
女もはた、いとあはじとも思へらず。されど、人目しげければえあはず。使ざねとある人なれば、遠くも宿さず。女のねや近くありければ、女、人をしづめて、子一つばかりに、男のもとに来たりけり。男はた、寝られざりければ、外の方を見いだしてふせるに、月のおぼろなるに、小さき童を先にたてて人たてり。男いとうれしくて、わが寝る所に率て入りて、子一つより丑三つまであるに、まだ何ごとも語らはぬに、かへりにけり。男いとかなしくて、寝ずなりにけり。つとめて、いぶかしけれど、わが人をやるべきにしあらねば、いと心もとなくて待ちをれば、明けはなれてしばしあるに、女のもとより、ことばはなくて、
君やこしわれやゆきけむ思ほえず夢かうつつか寝てかさめてか
男、いといたう泣きてよめる。
かきくらす心の闇にまどひにき夢うつつとは今宵さだめよ
と詠みてやりて、狩にいでぬ。


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