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伊勢物語絵詞 東下り隅田川 蔵書
伊勢物語繪詞 名にし おはゞ いざこと とはん 都鳥 我思ふ 人は ありや なしや と 東下り 隅田川 なほ行き行きて、武蔵の国と下総の国との中に、いと大きなる河あり。それをすみだ河といふ。その河のほとりにむれゐて、思ひやればかぎりなく遠くも来にけるかなと、わびあへるに、渡守、 「はや舟に乗れ。日も暮れぬ。」...
View Article伊勢物語絵詞 東下り 富士 蔵書
伊勢物語繪詞 時しらぬ 山は ふじの 祢 いつ とて か かの 子 まだら に 雪 の 降 ける 東下り 富士 富士の山を見れば、五月のつごもりに、雪いと白う降れり。 時知らぬ山は富士の嶺いつとてか鹿の子まだらに雪の降るらむ その山は、ここにたとへば、比叡の山を二十ばかり重ねあげたらんほどして、なりは塩尻のやうになんありける。
View Article伊勢物語絵詞 武蔵野 蔵書
伊勢物語繪詞 む さしの は けふは なやきそ 若艸の 妻も篭れり われもこもれり 武蔵野 むかし、をとこありけり。人のむすめをぬすみて、武蔵野へ率て行くほどに、ぬす人なりければ、国の守にからめられにけり。女をば草むらの中におきて、逃げにけり。道来る人、この野はぬす人あなりとて、火つけむとす。女、わびて、 武蔵野はけふはな焼きそ若草のつまもこもれり我もこもれり...
View Article伊勢物語絵詞 腐鶏 蔵書
伊勢物語繪詞 夜も 明けば きつに はめ な で くだ かけの まだきになきて せなをやりつる くだかけ むかし、男、陸奥の国にすずろにゆきいたりにけり。そこなる女、京の人はめづらかにやおぼえけむ、せちに思へる心なむありける。さてかの女、 なかなかに恋に死なずは桑子にぞなるべかりける玉の緒ばかり 歌さへぞひなびたりける。さすがにあはれとや思ひけむ、いきて寝にけり。夜ぶかくいでにければ、女、...
View Article伊勢物語絵詞 楓紅葉 蔵書
伊勢物語繪詞 君がため 手をれる 枝は 春ながら かくこそ 秋のもみぢ し にけりれ かへでのもみぢ むかし、男、大和にある女を見て、よばひてあひにけり。さてほどへて、宮仕へする人なりければ、かへり来る道に、三月ばかりに、かへでのもみぢのいとおもしろきを折りて、女のもとに、道よりいひやる。 君がため手折れる枝は春ながらかくこそ秋のもみぢしにけれ...
View Article伊勢物語絵詞 白菊 蔵書
伊勢物語繪詞 くれ なゐに 匂 ふ はいづら 白菊の 枝も とをゝに 降かとぞ 見ゆ 紅ひに 袖 かと にほふが ぞ みゆ 折ける うへの 人 の 白菊 は 白菊 むかし、まな心ある女ありけり。をとこ近うありけり。女、歌よむ人なりければ、心見むとて、菊の花のうつろへるを折りて、をとこのもとへやる。...
View Article伊勢物語絵詞 深草 蔵書
伊勢物語繪詞 来ざらむ 君は やは だに かりに をらん 鳴き なりて うづらと ならば 野と 深草 むかし、男ありけり。深草にすみける女を、やうやう飽きがたや思ひけむ、かかる歌をよみけり。 年を経てすみこし里をいでていなばいとど深草野とやなりなむ 女、返し、 野とならばうづらとなりて鳴きをらむかりにだにやは君は来ざらむ とよめりけるにめでて、ゆかむと思ふ心なくなりにけり。
View Article伊勢物語絵詞 芦辺 蔵書
伊勢物語繪詞 あしべ より みち くる しほの いや まし に 君に こゝろを おもひ ます かな かは をいかで 思ふ心 江に り こも 舟 さす さほの さして しる べ き 芦辺 むかし、男、津の国、莵原の郡に通ひける女、このたびいきては、または来じと思へるけしきなれば、男、...
View Article伊勢物語絵詞 住吉行幸 蔵書
伊勢物語繪詞 我 見 て も 久 し く なり ぬ 住 よし の 岸の姫 へ 松 いく ぬらん 世 住吉行幸 むかし、帝、住吉に行幸したまひけり。 われ見ても久しくなりぬ住吉のきしの姫松いくよ経ぬらむ おほん神、げぎやうしたまひて、 むつましと君はしら浪みづがきの久しき世よりいはひそめてき
View Article伊勢物語絵詞 狩の使い 蔵書
伊勢物語繪詞 君や來し われや 行けん 思 夢 ほへ か ず うつゝ か ねてか さめて か かきくらす こゝろの やみに まどひ にき 夢 うつゝ とは こよひ さだ め よ 狩の使 むかし、男ありけり。その男、伊勢の国に狩の使に行きけるに、かの伊勢の 斎宮なりける人の親、 「常の使よりは、この人よくいたはれ」...
View Article伊勢物語絵詞 馬の餞 蔵書
伊勢物語繪詞 出て行 君が ためにと ぬぎつれ ば 我さへも なく なり ぬべ き かな 馬の餞 むかし、あがたへゆく人に、馬のはなむけせむとて、呼びて、うとき人にしあらざりければ、家刀自さかづきささせて、女のさうぞくかづけむとす。あるじの男、歌よみて裳の腰にゆひつけさす。 いでてゆく君がためにとぬぎつればわれさへもなくなりぬべきかな...
View Article伊勢物語絵詞 荒れたる宿 蔵書
伊勢物語繪詞 あれにけり あはれ いくよの やど なら ん すみ ける と ひ の をとづれも せぬ 五十八段 荒れたる宿 むかし心つきて色ごのみなるおとこ...
View Article秋歌下 十市の里 式子内親王
百首歌に 式子内親王 ふけにけり 山の端ちかく 月 さえて とをちの里 に 衣うつこゑ 読み: ふけにけりやまのはちかくつきさえてとおちのさとにころもうつこゑ 十市御縣坐神社
View Article冷泉院の水の精
こんな話がある。 昔々、陽成院のいらっしゃった所は、二条通よりは北、西洞院大路よりは西、大炊御門大路(竹屋町通)よりは南、油小路よりは東の二町にお住まいになられていたが、院が御隠れになった後には、冷泉院の小路(夷川通)をば開けて、北町は人の家どもになって、南町には陽成院の御代にお造りなられた池など少し残って有ったそうじゃ。...
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