Quantcast
Channel: 新古今和歌集の部屋
Viewing all articles
Browse latest Browse all 4333

うすくこき 宮内卿の歿年2 詠歌歴と新古今

$
0
0
3 宮内卿の詠歌歴と新古今
宮内卿の詠歌歴を見ると、以下通り、百首歌二度、五十首歌二度とかなりハードなものになっている。これを昼夜を問わず、ほとんど寝ないで秀歌を作り続けたら過労死するだろう。

正治二年(1200年)
十一月七日 新宮三首歌合
冬 正治二年後鳥羽院後度百首
 立田山あらしや峰によわるらむわたらぬ水も錦絶えけり

建仁元年(1201年)
二月 老若五十首歌合 宮内卿局 宮内卿 勝12負19持19
 かきくらし猶ふる里の雪のうちに跡こそ見えね春は来にけり 勝
 からにしき秋のかたみやたつた山散りあへぬ枝に嵐吹くなり 勝
 竹の葉に風吹きよわる夕暮の物のあはれは秋としもなし 負
三月 通親亭影供歌合 女房宮内卿 勝2負2持2
 柴の戸をさすや日かげのなごりなく春暮れかかる山の端の雲 勝
三月 新宮撰歌合 宮内卿(後鳥羽院官女師光女) 負2持1
四月 鳥羽殿影供歌合 女房宮内卿 負1持2
八月三日 和歌所影供歌合 女房宮内卿 勝2負1持3
八月十五日 八月十五夜撰歌合 宮内卿 勝4持2
 心あるをじまの海士のたもとかな月宿れとは濡れぬものから 勝
 まどろまで眺めよとてのすさびかな麻のさ衣月にうつ声 勝
九月十三日 和歌所影供歌合 宮内卿 勝2無判1
九月~十二月 仙洞句題五十首
 花さそふ比良の山風ふきにけり漕ぎ行く舟のあと見ゆるまで
 あふさかやこずゑの花をふくからに嵐ぞかすむ關の杉むら
 月をなほ待つらむものかむらさめの晴れゆく雲のすゑの里人
 霜を待つ籬の菊のよひの間に置きまよふいろは山の端の月
十二月二十八日 石清水社歌合 宮内卿 負1

建仁二年(1202年)
五月二十六日 仙洞影供歌合 女房宮内卿 負3
九月十三日 水無瀬恋十五首歌合 女房宮内卿 勝3負10持2
 聞くやいかにうはの空なる風だにもまつに音する習ありとは 勝
九月二十六日 若宮撰歌合 女房宮内卿 持2
※聞くやいかにうはの空なる風だにもまつに音する習ありとは
九月二十九日 水無瀬桜宮十五番歌合 宮内卿 持2
※聞くやいかにうはの空なる風だにもまつに音する習ありとは
※ 千五百番歌合 宮内卿 勝29負26持35
 薄く濃き野邊のみどりの若草にあとまで見ゆる雪のむらぎえ 勝
 片枝さす麻生の浦梨はつ秋になりもならずも風ぞ身にしむ 勝
注※ 若宮撰歌合と水無瀬桜宮十五番歌合は、水無瀬恋十五首歌合の撰歌合
注※ 千五百番歌合は、九月二日に後鳥羽院から百首歌詠進の勅があり、途中で歌合形式に変更され、翌年三月完成

建仁三年(1203年)
六月十六日 影供歌合 女房宮内卿 勝2負1
七月十五日 八幡若宮撰歌合 女房宮内卿 勝1負2持1
十一月二十三日 俊成卿九十賀

元久元年(1204年)
十一月二十日 春日社歌合 女房宮内卿 持3

未詳
思ふことさしてそれとはなきもの秋の夕べを心にとぞとふ

正治二年後鳥羽院後度百首は、所謂無名歌人の力量を計る為に、若手を中心に召されており、範光、家長、雅経と長明、具親と宮内卿の兄妹、女房の越前らが参加している。
従ってその詠歌を良しと後鳥羽院が認め、実質的に歌壇デビューは老若五十首歌合であろう。この老若五十首歌合で宮内卿は十五六歳の小娘で有りながら、当時著名だった御子左家の歌人達に対して驚異的な成績を残す。その成績を示すと以下の通りである。
定家 勝5敗3持2
慈円 勝1負5持2※
忠良 勝2負2持6
寂蓮 勝2負3持5
家隆 勝2負6持2
注※232番は永青文庫では越前となっているが、配列や233番越前との関係から誤記として宮内卿歌とした。
一般的に歌合と言っても、身分がはっきりとしている貴族社会で、格下でしかも若い宮内卿が優った歌でも持とする事が多い。寂蓮の代表作と言われる「暮れていく春の湊は知らねども霞に落つる宇治の芝舟」(45番)に持としている。この会を主催した後鳥羽院のニュー・ウェイブ・デビューの試みは成功したのである。
又、新宮撰歌合では、宮内卿の歌に対して判者の俊成は、「以右(宮内卿)勝とすべきよし申すを左右ともに左(俊成)を可為勝之由申請也」と敵味方とも反対しているので自身の勝としたと言う辛うじて面目を保ったような事もあった。
建仁元年十二月二十八日 石清水社歌合から翌年五月二十六日 仙洞影供歌合まで5ヶ月空いている。参加できる歌の催しが無かったかも知れない。

Viewing all articles
Browse latest Browse all 4333

Trending Articles



<script src="https://jsc.adskeeper.com/r/s/rssing.com.1596347.js" async> </script>