○元久詩歌合(元久二年)
後鳥羽院
見渡せば山本かすむ水無瀬川夕は秋となに思ひけん
志賀の浦のおぼろ月夜の名殘とてくもりもはてぬ曙の空
常磐山秋をしのびて独行く袖の色より鹿や鳴くらん
旅衣けふみかの原露なれぬやどかせ山の秋の夕暮
俊成卿女
昔まであはれをみするつのくにの難波のおきの春の曙
春ふかき心の浪に雲消えて霞ぞなびくしがの浦風
吹きみだる山下風の露のまに秋の哀をおくる月影
心さへうつりもゆくか龍田山梢に秋の色を尋ねて
○卿相侍臣歌合(建永元年七月)
後鳥羽院
横雲のたなびく山の岡べなるすすきも白くふくあらしかな
もろこしの山人いまはをしむらん松浦がおききの明がたの月
おくるべき月だに山をまだでぬに夕のあらし袖にしをれぬ
俊成卿女
あはぬ夜の涙やむすぶ萩の露ささわけし袖の色はしらねど
人はただ浪のよるよるとはずとも月にあかしの秋のうら風
古郷も秋はゆふべをかたみにて風のみおくるをののしの原
○鴨御祖社歌合(建永二年三月)
後鳥羽院
まきの戸やつれなくあけし名残とてそでよりつらき朝霞かな
けふはくれぬあすはふもとのゆきてみんながらの山のあらし吹くめり
みづがきやわが代のはじめ契りおきしそのことのはを神やうけけむ
俊成卿女
あけぬるか霞なほまよふ谷の戸にふるすおぼゆるうぐいすの声
花の色もうつりもゆくかさざ波やながらの山のはるのゆふぐれ
君がためいのりおきけん万代のはるとも神ぞ空にしるらん
○賀茂別雷社歌合(建永二年二月)
後鳥羽院
難波がたすぎこし春に又やあふとはかなくかへる雁ぞなくなる
三芳野や春雨きほひちる花を今日もくれぬとさそふ山風
和歌の浦たむくる夜半の風にこそ猶此みちに神もなびくや
俊成卿女
雲井より秋風わけし雁金の帰るなみぢは霞なりけり
あめそそぐ花の雫はぬれつつも露をいとはでかへる山人
鐘の音もほのかにふけぬ神山の花のほかまでさそふ嵐に
後鳥羽院
見渡せば山本かすむ水無瀬川夕は秋となに思ひけん
志賀の浦のおぼろ月夜の名殘とてくもりもはてぬ曙の空
常磐山秋をしのびて独行く袖の色より鹿や鳴くらん
旅衣けふみかの原露なれぬやどかせ山の秋の夕暮
俊成卿女
昔まであはれをみするつのくにの難波のおきの春の曙
春ふかき心の浪に雲消えて霞ぞなびくしがの浦風
吹きみだる山下風の露のまに秋の哀をおくる月影
心さへうつりもゆくか龍田山梢に秋の色を尋ねて
○卿相侍臣歌合(建永元年七月)
後鳥羽院
横雲のたなびく山の岡べなるすすきも白くふくあらしかな
もろこしの山人いまはをしむらん松浦がおききの明がたの月
おくるべき月だに山をまだでぬに夕のあらし袖にしをれぬ
俊成卿女
あはぬ夜の涙やむすぶ萩の露ささわけし袖の色はしらねど
人はただ浪のよるよるとはずとも月にあかしの秋のうら風
古郷も秋はゆふべをかたみにて風のみおくるをののしの原
○鴨御祖社歌合(建永二年三月)
後鳥羽院
まきの戸やつれなくあけし名残とてそでよりつらき朝霞かな
けふはくれぬあすはふもとのゆきてみんながらの山のあらし吹くめり
みづがきやわが代のはじめ契りおきしそのことのはを神やうけけむ
俊成卿女
あけぬるか霞なほまよふ谷の戸にふるすおぼゆるうぐいすの声
花の色もうつりもゆくかさざ波やながらの山のはるのゆふぐれ
君がためいのりおきけん万代のはるとも神ぞ空にしるらん
○賀茂別雷社歌合(建永二年二月)
後鳥羽院
難波がたすぎこし春に又やあふとはかなくかへる雁ぞなくなる
三芳野や春雨きほひちる花を今日もくれぬとさそふ山風
和歌の浦たむくる夜半の風にこそ猶此みちに神もなびくや
俊成卿女
雲井より秋風わけし雁金の帰るなみぢは霞なりけり
あめそそぐ花の雫はぬれつつも露をいとはでかへる山人
鐘の音もほのかにふけぬ神山の花のほかまでさそふ嵐に