
青山有雪諳
松性碧落無
雲称鶴心千丈
凌雪應喩嵆
康之姿百歩乱
風誰破養由之射
和漢朗詠集 松
寄殷堯潘先輩 許渾
十載功名翰墨林 十載の功名は翰墨林為從知己信浮沈 為に知己に従い浮沈を信ず
青山有雪諳松性 青山に雪有りて松の性を諳(そら)んず
碧落無雲稱鶴心 碧落に雲無くして鶴の心に称(かな)へり帶月獨歸蕭寺遠 月を帯び独り帰る蕭寺遠く玩花頻醉庾樓深 花を玩び頻りに醉ひ庾樓深い
思君一見如瓊樹 君を思ひ一見瓊樹の如く空把新詩盡日吟 空しく新詩を把り尽日吟ず
意訳青山に雪が降り冬枯れとなって、常緑の松の本性を知る。晴天に一片の雲も無くなって、清らかな鶴の心にかなうを知る。そのようにならないと堯潘先輩の心を知る事が出来ないのだ。
本朝文粹 柳變爲松賦 紀長谷雄至脆者柳 至る脆きは柳最貞者松 最も貞きは松何二物之各別 何二物の各々別れん忽一化以改容云々 忽ち一つに化し以て容を改めむ云々若迺寒暑改節 若し迺ち寒暑は節に改まる星霜迭謝 星霜謝り迭る厭鳴蟬於風之秋 蝉の鳴くを厭いて風の秋待迺鶴於警露之夜 待つ迺ち鶴は露の夜を
千丈凌雪 千丈雪を凌ぐ應喩嵆康之姿 まさに嵆康の姿に喩へつべし
百歩亂風 百歩風に乱る誰破養由之射 誰か養由が射を破らむ
凡宇宙之内 凡そ宇宙の内何奇不生 天地之間何恠不有况被變化無窮
何只在松與柳而哉
意訳千丈の松が雪を凌いで、魏の竹林七賢の嵆康の姿に喩えるべき。百歩離れて柳の葉が風に乱れて、誰がかの百発百中の養由の矢を射るを破る事が出来ようか。

令和元年12月20日 肆點參