絵入自讚歌註 宗祇
みたるやうなればおし返して哀其うらみはだれならん。かぜの我うへにこそ其恨は侍れと云心にこそ。
むらさめのつゆもまだひぬまきのはに きりたちのぼるあきの夕ぐれむら雨のなごりの露まきのはやどりてその興たぐひなきにいまだ其露もひぬに霧立のぼりて興をそへたる心にや。是はたゞ見る様の躰にこそ。 さびしさはその色としもなかりけり まきたつ山のあきの夕ぐれ此哥まきのは色づかぬ物なればそれをことばのえんにしていへる也。心は秌のさびしさはさらになに
の色共わかず無分別のうへさゝへてさびしき物也。されば其色としもなかりけりと云にぞ能〃此哥などをば人みせずば作者の心に大にたがひ侍るべし。 うらみわびまだし今はの身なれども おもひなれにし夕ぐれのそらこゝろあきらかなり。 おもひあれば袖にほたるをつゝみても いはゞやものをとふ人もなし後撰の哥にほたるをかたみの袖につゝみたるかあらはなるをみてつゝめどもかくれぬ物はなつむしの身よりあまれる思ひなりけり。とよめるは
思ひのしのばれぬこゝろ也。此うたはおひ出ぬ下の
おもひをばさそととふ人もなければほたるをもつゝみてかくといはゞやとよめるにや侍らん。 さとはあれぬむなしきとこのあたりまで 身はならはしのあきかぜぞふく逢不逢の心也。小町が哥に手まくらのすきまの風もさむかりき身はならはしの物にぞ有ける。と云哥をとれり。たまさかに尋し人たへ行てさともあるゝばかりの折ふしむなしきとこに秋風のかなしく吹入たるを思ひ入て身はならはしにとよめるなり。 おひのなみこえける身こそあはれなれ
ことしもいまはすゑのまつやま海邊歳暮の心也。儀はかくれずさし向ふ感情有哥也。
みたるやうなればおし返して哀其うらみはだれならん。かぜの我うへにこそ其恨は侍れと云心にこそ。
むらさめのつゆもまだひぬまきのはに きりたちのぼるあきの夕ぐれむら雨のなごりの露まきのはやどりてその興たぐひなきにいまだ其露もひぬに霧立のぼりて興をそへたる心にや。是はたゞ見る様の躰にこそ。 さびしさはその色としもなかりけり まきたつ山のあきの夕ぐれ此哥まきのは色づかぬ物なればそれをことばのえんにしていへる也。心は秌のさびしさはさらになに
の色共わかず無分別のうへさゝへてさびしき物也。されば其色としもなかりけりと云にぞ能〃此哥などをば人みせずば作者の心に大にたがひ侍るべし。 うらみわびまだし今はの身なれども おもひなれにし夕ぐれのそらこゝろあきらかなり。 おもひあれば袖にほたるをつゝみても いはゞやものをとふ人もなし後撰の哥にほたるをかたみの袖につゝみたるかあらはなるをみてつゝめどもかくれぬ物はなつむしの身よりあまれる思ひなりけり。とよめるは
思ひのしのばれぬこゝろ也。此うたはおひ出ぬ下の
おもひをばさそととふ人もなければほたるをもつゝみてかくといはゞやとよめるにや侍らん。 さとはあれぬむなしきとこのあたりまで 身はならはしのあきかぜぞふく逢不逢の心也。小町が哥に手まくらのすきまの風もさむかりき身はならはしの物にぞ有ける。と云哥をとれり。たまさかに尋し人たへ行てさともあるゝばかりの折ふしむなしきとこに秋風のかなしく吹入たるを思ひ入て身はならはしにとよめるなり。 おひのなみこえける身こそあはれなれ
ことしもいまはすゑのまつやま海邊歳暮の心也。儀はかくれずさし向ふ感情有哥也。