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美濃の家づと 一の巻 夏歌1

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 夏哥

     更衣           慈圓大僧正

散はてゝ花のかげなき木ノ本にたつことやすきなつ衣かな

めでたし。本哥の√けふのみと春を思はぬときにだにもたつ

ことやすき花の陰かは、三の句、木ノ本はといふべきを、にといへるは、

夏衣をたつ方をむねとせればなり。はといひては、衣のかた

にうとし。四の句は、本哥の意とむかへて、今はたつことやすき

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なり。さて又月日のはやくうつりて、夏になれる意をも、かねた

るべし。本哥にては、たゞ花の陰の、立さりがたき意のみなるを、

かくとりなして、三ツの意をかねたるは、此集のころのたく

みのふかきなり。

     夏のはじめのうた       俊成卿女

をりふしもうつればかへつ世の中の人のこゝろのはなぞめの袖

めでたし。本歌√うつろふ物は世の中の人の心の花にぞ有

ける。√世中の人の心は花染の云々。初二句は、人の心のかはり

やすきことは、男女の中のみならず、おりふしのうつるにも、うつ

りかはるよといへるにて、花染衣をすてゝ、夏衣になれることをいへる也。

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     斎院に侍ける時神だちにて 式子内親王

忘れめやあふひを草に引むすびかりねの野べの露のあけぼの

草には、草枕に也。三の句、引むすぶと有けんを、ふをひに

うつし誤れるか。又はむすぶといひては、宵のほどの事と聞えて、

曙にはいかゞとおぼして、本よりむしびとよみ玉へるか。ひにては、

詞のとゝのはぬ哥也。もしむすびといはゞ、むすびしと、しもじ

あるか。或はかりねせしのべといはでは、とゝはず。

     最小四天王院ノ障子にあさかの沼かきたる所

                 雅経

野べはいまだ浅かの沼にかるくさのかつ見るまゝにしげるころかな

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野べの草はまだ浅きに、此沼のかつみは、見るがうちにしげるとよめる

なり。此趣いかゞ。其故は、野の草のまだ浅きに、かつみのみしげらん

こと、よしなければなり。もしかつみは殊にはやくしげるよしあらば

こそ、さもいはめ。又野べ草は、まだ浅きが、見るがうちにしげる

と、野の草のしげるをよめるにて、二三の句は、たゞ浅といひ、かつみる

とはいはん料のみともいはんか。さては浅かの沼の題にかなはず。


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