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けふまでは人をなげきてくれにけりいつ身の上にならむとすらん
だいしらず 清慎公みちしばの露にあらそふ我身哉いづれかまづはきえんとすらん
皇嘉門院何とかやかべにをふなる草のなよそれにもたぐふ我身なりけり
権中納言資実こし方をさながら夢になしつればさむるうつゝのなきぞかなしき
松の木のやけたるをみて 性空上人ちとせふる松だにくゆる世中に今日ともしらでたてる我かな 題不知 俊頼朝臣
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数ならで世にすみの江のみをつくしいつをまつともなき身成けり
皇太后宮大夫俊成うきながら久しくぞ世を過にける哀やかけし住吉の松
春日社哥合に松風と云ことを 家隆朝臣春日山谷の埋木くちぬとも君につげこせみねの松風
宜秋門院丹後何となくきけば泪ぞこぼれぬる苔の袂にかよふ松かぜ
さうしにあしでなが哥などかきておく
に 女御徽子女王みな人のそむきはてぬる世中にふるの社の身をいかにせん
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新古今和歌集巻第十八 雑歌下(世の中の常なき頃)( 大江嘉言)今日までは人を歎きて暮れにけりいつ身の上にならむとすらむ
よみ:きょうまではひとをなげきてくれにけりいつみのうえにならんとすらむ
題しらず 清慎公道芝の露に争ふわが身かないづれかまづは消えむとすらむ
よみ:みちしばのつゆにあらそうわがみかないずれかまずはきえむとすらむ 隠
作者:藤原実頼。900ー970。別名小野宮殿。
備考:露と消えは縁語。
題しらず
皇嘉門院何とかや壁に生ふなる草の名よそれにもたぐふわが身なりけり
よみ:なにとかやかべにおうなるくさのなよそれにもたぐうわがみなりけり 隠
備考:「壁に生ふる草」の名を「いつまで草」と言う。
題しらず
権中納言資実来し方をさながら夢になしつれば覚むる現のなきぞ悲しき
よみ:こしかたをさながらゆめになしつればさむるうつつのなきぞかなしき
備考:夢と覚めは縁語。夢とうつつは対の縁語。
松の木のやけたるをみて 性空上人千歳経る松だにくゆる世の中に今日とも知らでたてるわれかな
よみ:ちとせふるまつだにくゆるよのなかにきょうともしらでたてるわれかな 隠
備考:今日は千歳の対。民博為相本では「くゆる」は「朽つる」。
題知らず 源俊頼朝臣数ならで世にすみの江の澪標いつをまつともなき身なりけり
よみ:かずならでよにすみのえのみをつくしいつをまつともなきみなりけり 隠
備考:住みと住之江、澪標と身を尽くしは懸詞。康和四年艶書合で中宮上総に贈った歌。恋歌を述懐歌と扱った。
題しらず
皇太后宮大夫俊成憂きながら久しくぞ世を過ぎにけるあはれやかけし住吉の松
よみ:うきながらひさしくぞよをすぎにけるあわれやかけしすみよしのまつ 隠
備考:文治六年五社百首の住吉社。久しくは松の縁語。
春日社歌合に松風といふことを
藤原家隆朝臣春日山谷のうもれ木朽ちぬとも君に告げこせ峰のまつかぜ
よみ:かすがやまたにのうもれぎくちぬともきみにつげこせみねのまつかぜ 隠
備考:元久元年春日社歌合。
宜秋門院丹後なにとなく聞けばなみだぞこぼれぬる苔の袂に通ふ松風
よみ:なにとなくきけばなみだぞこぼれぬるこけのたもとにかようまつかぜ 隠
備考:苔の袂は僧衣。
草子に葦手長歌など書きて奥に 女御徽子女王皆人のそむきはてぬる世の中にふるの社の身をいかにせむ
よみ:みなひとのそむきはてぬるよのなかにふるのやしろのみをいかにせむ
備考:葦手長歌は、葦と水鳥を模して散らし書きした天元三年頃村上天皇三宮保子内親王に献じた草子。ふるの社は大和の布留神社で経ると古の懸詞。
令和2年3月5日 壱