藤滋
花悔帰根無益悔鳥期入谷定延〔期〕
さくらばなはるくわゝれるとしだに〔も〕 人のこゝろにあかれやはせね 伊勢 鴬 賈嶋 鶏既鳴忠臣待旦鴬未出遺賢在谷 謝觀 誰家碧樹鴬啼而羅幕猶垂 幾處華堂夢覚而珠簾未卷 稹 咽霧山鴬啼尚少穿砂葦笋〔葉纔分〕 清原滋藤 花の根に帰らむ悔れども悔るに益無く、 鳥は谷に入ことを期すれども定めて〔期を〕延らむ。 古今集 弥生にうるふ月ありける年よめる 伊勢 桜花春くははれる年だに〔も〕人の心にあかれやはせね 伊勢 ※粘葉本では「あかれやはする」とある。 鳳為王賦 賈嶋 鶏既に鳴て忠臣旦(あした)を侍。鴬未だ出ず遺賢(ゐけん)谷に在。 暁賦 謝觀 誰が家の碧樹にか鴬啼て羅幕(らばく)なお垂たる。 幾く処の華堂にか夢覚て珠簾(しゅれん)未だ卷かず。 早春尋李校書 元稹 霧に咽ぶ山鴬は啼くなお少れなり。 沙を穿つ葦笋(ろじゅん)は〔葉纔(わず)かに分〕てり。
白 䑓頭有酒鴬呼客水面無塵風〔洗池〕 白
鴬聲誘引来花下草色拘留坐水邊 菅三品 感同類於相求離鴻去鴈之應春囀 會異氣而終混龍吟魚躍之伴曉啼
菅三品 燕姫之袖暫収猜繚亂於舊拍 周郎之簪頻動顧間関於新花 菅丞相 新路如今穿宿雪舊巣為後属春雲
奉和思黯自題南荘見示兼呈夢得 白居易 台の頭に酒あり鴬客を呼。水の面に塵無く風〔池を洗ふ〕 春江 白居易
鴬の声誘引せられて花下に来、草の色に拘留せられて水辺に坐す。 仲春内宴侍仁寿殿 同賦鳥声韻管弦応製 菅原文時 同類を相求るに感ず。離鴻去鴈(りこうきょがん)の春の囀に応ず。 異気に会めて終に混ず。龍吟魚躍(りょうぎんぎょやく)の暁に啼を伴ふ。
同 菅原文時 燕姫が袖暫く収て、繚乱(りょうらん)を旧拍を猜む。 周郎が簪頻に動て間関を新花顧る。 早春内宴侍清涼殿同賦鴬出谷応製 菅原道真 新路は如今(いま)宿雪を穿つ。旧巣は後の為属春雲〔に〕属す。
菅三品 西楼月落花間曲中殿燈残竹裏〔音〕 あらたまのとし立かへるあしたよ〔り〕 またるゝものはうぐひすの聲 素性 あさみどりはるたつそらにうぐひすの はつこゑまたぬ人はあらじな 麗景殿女御 うぐひすのこゑなかりせばゆきゝえぬ 山ざといかではるをしらまし 中務 霞 白居易 霞光曙後殷於火草色晴来嫩似煙 菅丞相 鑽沙草只三分許跨樹霞纔〔半段餘〕 宮鴬囀暁光詩 菅原文時 西楼に月落て花の間の曲、中殿に灯残て竹裏の〔音〕 拾遺集 延喜御時月次御屏風に 素性法師 あらたまの年立返るあしたよ〔り〕待たるるものはうぐひすの声 続後撰集 麗景殿の女御の屏風に 紀貫之 あさみどり春立つ空にうぐひすの初声待たぬ人はあらじな ※続後撰集では紀貫之作とし、「初音を待たぬ」としている。 拾遺集 天暦十年三月廿九日内裏歌合に 中務 鴬のこゑなかりせば雪消えぬ山里いかで春を知らまし 早春晴寄蘇州夢得 白居易 霞の光は曙て後火りも殷(あか)し。草の色は晴れ来て煙に似て嫩(わか)め 同賦春浅帯軽寒応製 菅原道真 沙を鑽(き)る草は只三分許り、樹に跨(またが)る霞は纔(わずか)に〔半段余り〕
さくらばなはるくわゝれるとしだに〔も〕 人のこゝろにあかれやはせね 伊勢 鴬 賈嶋 鶏既鳴忠臣待旦鴬未出遺賢在谷 謝觀 誰家碧樹鴬啼而羅幕猶垂 幾處華堂夢覚而珠簾未卷 稹 咽霧山鴬啼尚少穿砂葦笋〔葉纔分〕 清原滋藤 花の根に帰らむ悔れども悔るに益無く、 鳥は谷に入ことを期すれども定めて〔期を〕延らむ。 古今集 弥生にうるふ月ありける年よめる 伊勢 桜花春くははれる年だに〔も〕人の心にあかれやはせね 伊勢 ※粘葉本では「あかれやはする」とある。 鳳為王賦 賈嶋 鶏既に鳴て忠臣旦(あした)を侍。鴬未だ出ず遺賢(ゐけん)谷に在。 暁賦 謝觀 誰が家の碧樹にか鴬啼て羅幕(らばく)なお垂たる。 幾く処の華堂にか夢覚て珠簾(しゅれん)未だ卷かず。 早春尋李校書 元稹 霧に咽ぶ山鴬は啼くなお少れなり。 沙を穿つ葦笋(ろじゅん)は〔葉纔(わず)かに分〕てり。
白 䑓頭有酒鴬呼客水面無塵風〔洗池〕 白
鴬聲誘引来花下草色拘留坐水邊 菅三品 感同類於相求離鴻去鴈之應春囀 會異氣而終混龍吟魚躍之伴曉啼
菅三品 燕姫之袖暫収猜繚亂於舊拍 周郎之簪頻動顧間関於新花 菅丞相 新路如今穿宿雪舊巣為後属春雲
奉和思黯自題南荘見示兼呈夢得 白居易 台の頭に酒あり鴬客を呼。水の面に塵無く風〔池を洗ふ〕 春江 白居易
鴬の声誘引せられて花下に来、草の色に拘留せられて水辺に坐す。 仲春内宴侍仁寿殿 同賦鳥声韻管弦応製 菅原文時 同類を相求るに感ず。離鴻去鴈(りこうきょがん)の春の囀に応ず。 異気に会めて終に混ず。龍吟魚躍(りょうぎんぎょやく)の暁に啼を伴ふ。
同 菅原文時 燕姫が袖暫く収て、繚乱(りょうらん)を旧拍を猜む。 周郎が簪頻に動て間関を新花顧る。 早春内宴侍清涼殿同賦鴬出谷応製 菅原道真 新路は如今(いま)宿雪を穿つ。旧巣は後の為属春雲〔に〕属す。
菅三品 西楼月落花間曲中殿燈残竹裏〔音〕 あらたまのとし立かへるあしたよ〔り〕 またるゝものはうぐひすの聲 素性 あさみどりはるたつそらにうぐひすの はつこゑまたぬ人はあらじな 麗景殿女御 うぐひすのこゑなかりせばゆきゝえぬ 山ざといかではるをしらまし 中務 霞 白居易 霞光曙後殷於火草色晴来嫩似煙 菅丞相 鑽沙草只三分許跨樹霞纔〔半段餘〕 宮鴬囀暁光詩 菅原文時 西楼に月落て花の間の曲、中殿に灯残て竹裏の〔音〕 拾遺集 延喜御時月次御屏風に 素性法師 あらたまの年立返るあしたよ〔り〕待たるるものはうぐひすの声 続後撰集 麗景殿の女御の屏風に 紀貫之 あさみどり春立つ空にうぐひすの初声待たぬ人はあらじな ※続後撰集では紀貫之作とし、「初音を待たぬ」としている。 拾遺集 天暦十年三月廿九日内裏歌合に 中務 鴬のこゑなかりせば雪消えぬ山里いかで春を知らまし 早春晴寄蘇州夢得 白居易 霞の光は曙て後火りも殷(あか)し。草の色は晴れ来て煙に似て嫩(わか)め 同賦春浅帯軽寒応製 菅原道真 沙を鑽(き)る草は只三分許り、樹に跨(またが)る霞は纔(わずか)に〔半段余り〕