参議雅經 飛鳥井祖
権中納言忠教卿飛鳥井難波祖曽孫。刑部卿頼輔孫。刑部
卿頼經子。母顕雅女也云云。參議從三位。蹴鞠和哥兩道の
人にて、新古今五人の撰者の一人也。徹書記物語云、
雅經は定家の門弟たりしほどに、代〃皆二条家の
門弟の分也。只公宴などにて、懐紙を三行五字にかゝるゝ
斗こそ雅經の家のかはりめにてはあれ。其外は
何事にても唯二条家とおなじ物也云云。古今著聞云、
順徳院御位の時、高陽院殿に行幸なりて、御逗留
の日、鞠ありけり。主上、院、関白殿、前太政大臣殿、中納
言忠信卿、有雅卿、刑部卿宗長卿、右兵衛督雅經朝臣
等也。刑部卿は衣冠にて上鞠仕けり。雅經朝臣は赤
帷子をきたりけり。ねこがきをしかれたり。此人数ありがたき
ためしなるべし。
みよし野ゝ山の秋風さよふけて故郷寒くころもうつなり
※徹書記物語 正徹が書いた歌論書。歌論 正徹物語 13
※古今著聞 古今著聞集 蹴鞠第十七
※ねこがき 猫掻き。わらで編んだむしろ。蹴鞠などで敷くもの。
新古今秋下、𢭏衣のこゝろを云云。御抄云、吉野は天武
天皇のしばらく皇居ありし所なれば、故郷とよむ也。
是は友則の√みよしのゝ山のしら雪つもるらしふる郷
寒くなりまさる也 此哥をとれり。哥心はかくれたる
處もなく、詞づかひ妙にして句〃に其感侍るにや。
かやうの哥をいかにも信仰すべき事といへり。摂政殿
の蛬なくや霜夜の詞づかひにおなじかるべきにや云云。
此哥、山の秋風さよふけてといひつる感情ふかき詞とぞ。
※御抄 細川幽斎の百人一首解説本。幽斎抄。
※友則 坂上是則の間違い。
※みよしのゝ 古今集 ならの京にまかれりける時にやとれりける所にてよめる。和漢朗詠集、俊成三十六人歌合。