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Channel: 新古今和歌集の部屋
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鴨長明方丈記之抄 世の有にくき事4 その間折々の違ひ目に

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なり。其間折々のたがひめに、をのづから

みじかき運をさとりぬ。すなはち五十

の春をむかへて家を出世をそむけり

もとより妻子なけれは捨てがたきよすがも

なし。身に官禄あらず。何に付てか執

をとゞめん。空しく大原山の雲にいくそ

ばくの春秋をかへぬる爰に六十の露

きえがたにをよびて、更に末葉のやど

りをむすベること有。いはゞ狩人の一夜の

宿を作り老ひたるかいこの眉をいとな

むがごとし。これを中比のすみかになずら

      なり。その間、折々のたがひ目に、自ずから、短き運を悟りぬ。すな はち、五十の春を迎へて、家を出、世を背けり。もとより、妻子なけ れは、捨て難きよすがもなし。身に官禄あらず。何に付てか、執をと どめん。空しく大原山の雲に、いくそばくの春秋をかへぬる。 ここに、六十の露消え方に及びて、更に末葉の宿りを結ベること有。 いはば、狩人の一夜の宿を作り、老ひたる蚕の眉を営むが如し。これ を中比の栖になずら   (参考)前田家本 也。その間、折々のたがひめに、おのづから短き運を悟りぬ。すな はち、五十の春を迎へて、家を出て世を背けり。元より妻子なけ れば、捨て難きよすがもなし。身に官禄あらず。何に付けてか執をと どめむ。虚しく大原山の雲に伏して、五かへりの春秋をなん経にける。 ここに六十の露消えがたに及びて、更に末葉の宿りをむすべる事あり。 いはば、旅人の一夜の宿を作り、老たる蚕の繭を営なまんがごとし。これ を中ころのすみかに並   (参考)大福光寺本 也。其間ヲリヲリノタカヒメヲノツカラミシカキ運ヲサトリヌス。(ス)ナ ハチイソチノ春ヲムカヘテ家ヲ出テ世ヲソムケリ。モトヨリ妻子ナケ レハステカタキヨスカモナシ身ニ官禄アラス。ナニゝ付ケテカ執ヲト ゝメン。ムナシク大原山ノ雲ニフシテ又五カヘリノ春秋ヲナン経ニケル。 コゝニ六ソチノ露キエカタニヲヨヒテ更スヱハノヤトリヲムスヘル事アリ。 イハゝ旅人ノ一夜ノ宿ヲツクリ老タルカイコノマユヲイトナムカコトシ。是 ヲナカコロノスミカニナラ


おりごとつぎ琵琶 今の  世の三味線などのさほ  を二◯に折様にたゝむた  ぐひなるべし。おきにた  よりたらんためなるべし。     ほどろ  敷ものゝ類なる  べし。     つかなみ 敷ものゝ類なる  べし。     ※つかなみは、流布本にのみ存する文の解説。     大原来迎院は、融通念仏の本拠地であり、天台声明の根本道場で有名。鎌倉時代初期には多くの寺坊があった。   方丈記延徳本には、「ふかき谷のほとり、閑なる林の間に」とあり、大原は盆地の広い原となっている。

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