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鴨長明方丈記之抄 養和の飢餓5 仁和寺に隆暁といふ人
などゝも有けり仁和寺に隆曉法印 といふ人、かくしつゝ数しらず。しぬることを かなしみて聖をあまたかたらひつゝ、其死者 の見ゆるごとに、阿字を書て縁をむす ばしむるわざをなむせられける。其数を しらんとて四五両月がほど、かぞへたりけ れは京の中一条より南九条より北 京極より西朱雀より東、道の邊に ある頭すべて四万二千三百餘なん有 ける。いはんや其前後に死ぬるものも おほく、河原白川西の京、もろ/\の...
View Article鴨長明方丈記之抄 養和の飢饉5 辺地などを加えて
邊地などをくはへていはゞ際限も有 べからず。いはんや諸国七道をや。近 く崇徳院の御位のとき長承の比 かとよ。かゝるためしは有けるときけど 其世のありさまはしらず。まのあたり いとめづらかにかなしかりし事也。又元暦二年 の比、大なゐふること侍き。其様つね ならず山くづれて川をうづみ海かたぶき て陸をひたせり。土さけて水わきあがり いはほわれて谷にまろひ入渚こぐ舩は 波にたゞよひ、道行駒は足の立どをま...
View Article百人一首解 白雪著 かささぎの渡せる橋
百人一首解 かさゝぎの哥 中納言家持 其元の御抄には色々の古事ヲ出ス。是ハ不好。此哥の 見やうは貞徳云、此哥の鵲のはしはたゞ天の事也。哥 の心は霜天満と云義也。家持が闇夜に起出て月もなく、 さへたる天に向ひ吟じ出たる也。霜の天に満たるとて 眼前にふりたる霜にはあらず。寒き夜は霜も満たるや うにおぼゆるの心也。 季吟云、深夜の心すみて、お りふし橋の一筋を見へて霜あきらかに置きわたすさま、...
View Article鴨長明方丈記之抄 元暦の大地震1 都の辺には
とはせり。况や都のほとりには在々所々堂 舎廟一として全からず或はくづれ、或 はたふれたる間塵灰立上りて盛成 煙のごとし。地の震ひ、家のやぶるゝ音 いかづちにことならず。家の中にをれば忽 に打ひしげなんとす。はしり出れば又地 われさく羽なければ空へもあがるべからず 龍ならねば雲にのぼらんこと難しをそ れの中に恐るべかりけるは只地震なり けりとぞ覚え侍し。其中に或武士の ひとり子の六七ばかりに侍りしが...
View Article絵入伊勢物語 下 元禄九年版 蔵書
絵入 伊勢物語 下 近代以狩使事為端之本出来末代之人今案也。更 不可用之此物語古人之説〃不同或云在中将之自 書或称伊勢筆作就被此有書落事等上古之人 強不可尋其作者只可翫詞花言葉而已 戸部尚書 在判 元禄丙子九歳正月 二條通柳馬場西口入 万屋市兵衛 逢ひがたき女 染河 恋せじの禊 狩使 神の御垣 布引の瀧
View Article鴨長明方丈記之抄 元暦の大地震2 築地の被の下に
ついひぢのおほひの下に小家を作りて、 はかなげなる跡なしことをしてあそび 侍りしが、俄にくづれうめられて、あとか たなくひらにうちひさがれて二の目など 一寸ばかりうち出されたるを、父母かゝへて 聲もおしまずかなしみあひて侍りしこそ、 あはれにかなしく見侍りしが、子のかなしみ には、たけきものも恥をわすれけりと 覚えていとおしく理かなとぞ見侍りし かくおびたゞしくふることはしばしにてやみ...
View Article読癖入伊勢物語 四十九~五十五段 蔵書
四十九 業平ノイモウト むかし男いもふとの、いとおかしげなりけりを、見をりて うらわかみねよげに見ゆる若草を人のむすばんことをしぞ思ふ と聞へけり。かへし 初草のなどめずらしきことのはぞうらなく物を思ひけるかな 五十 むかし男ありけり。うらむる人をうらみて 鳥の子を十つゝ十はかさぬとも思わぬ人を思ふ物かは といへりければ...
View Article鴨長明方丈記之抄 元暦の大地震3 驚く程の地震
に驚くほどの地震二三十度ふらぬ 日はなし。十日廿日過にしかば、やう/\間どを になりて或は四五度二三度、もしは一日 まぜ、二三日に一度など、大かた其名残 三月ばかりや侍けん。四大種の中に、水火 風はつねに害をなせど、大地に至りては 殊なる變をなさず。むかし齊衡の比 かとよ大地震ふりて、東大寺の仏のみ ぐし落などして、いみじき事ども侍 りければ、猶此たびにはしかずとぞ...
View Article歌論 無名抄 式部赤染勝劣事
式部赤染勝劣事 或人云俊頼の髄脳に定頼中納言公任大納言に しきぶあかぞめとがをとりまさりをとはる。大納言 いはく式部はこやとも人をいふべきにとよめる物なり。 ひとつ口にいふべからずと侍ければ中納言かさねて 云式部が哥にははるかにてらせ山の葉の月と 云哥をこそ世の人は秀哥と申侍れと云。大納言 いはくそれぞ世の人のしらぬ事をいふにくらき よりくらきに入ことば経の文なればいふにもおよば...
View Article読癖入伊勢物語 六十三〜六十四
六十三段 九十九髪 といふをいとはづかしと思ひて、いらへもせでゐたるを、などいらへも せぬといへば、泪のこぼるゝに目も見えず、ものもいわれずといふ これやこのわれにあふみをのがれつゝ年月ふれどまさり㒵なき といひて、きぬ脱ぎてとらせけれど、すてゝにげにけり。いづ ちいぬらんともしらず。 六十三むかし世心つける女、いかで心なさけあらん男に、あひえてし...
View Article鴨長明方丈記之抄 世の有にくき事1 立居につけて
らず。立居につけて恐れおのゝく、た とへば雀の鷹の巣に近づけるがご とし。もしまづしくして冨る家の隣にを るものは、朝夕すぼき姿を恥てへつ らひつゝ、出入妻子僮僕のうらやめるさま を見るにも冨る家の人の、なひがしろ なるけしきを聞にも心念〃にうごき て、ときとしてやすからず。もしせばき地 に居れば近く炎上する時其害を のかるゝことなし邊地にあれば往 反わつらひおほく、盗賊の難はなれ...
View Article読癖入伊勢物語 六十五〜六十七
六十五段 恋せじの禊 六十五昔おほやけおぼしてつかふ給ふ女の、色ゆるされたる有けり。おほ みやすん所とて、いますかりけるいとこなりけり。殿上にさぶらひける在 原なりける男の、まだいとわかかりけるを、此女あひしりたりけり。 男女がたゆるされたりければ、女のある所にきて、むかひおりけれ ば、女いとかたはなり。身もほろびなん。かくなせそといひければ、...
View Article鴨長明方丈記之抄 世の有にくき事2 勢ひ有者は
がたし。いきおひ有者は貪欲ふかく、ひ とり身なるものは人にかるしめらる。寶 あればおそれおほく、貧しければ歎切 也。人をたのめば身他のやつことなり、人 をはごくめば、心恩愛につかはる。世にした がへば身くるし又したがはねば狂へるに似 たり。いづれのところをしめ、いかなるわざを してか、しばしも此身をやどし、玉ゆらも心 をなぐさむべき。わが身父方の祖母の家 を傳へて、久しく彼所にすむ。その後...
View Article読癖入伊勢物語 六十八〜六十九段(2頁欠丁)
六十九段 狩の使 らぎばかりにいきけり。かうちの国いこま山をみれば、くもりみはれ み立ゐる雲やまず。朝よりくもりて、昼はれたり。雪いとしろう 木のすへにふりたり。それをもて、かのゆくへの中に、たゞ獨讀ける きのふけふ雲の立まひかくろふは花の林をうしとなりけり。 六十八むかし男いづみの国へいきけり。住吉のこほり、住吉の里、住吉のはま...
View Article鴨長明方丈記之抄 世の有にくき事3 遂に跡止むる事
りしかば、つゐに跡とむることを得ずして 三十餘にして更に我心と一の庵を結ぶ 是を有し住居になずらふるに十分が 一なりたゞ居屋ばかりをかまへて、はか/"\ しくは、屋を作るに及ばず。わづかについぢ をつけりといへ共門たつるにたづきなし 竹を柱として車やどりとせり。雪ふり 風吹ごとにあやうからずしもあらず。所 は河原ちかければ水の難ふかく、白波 の恐もさはがし。すべてあらぬ世を念じ...
View Article読癖入伊勢物語 七十五~八十一段
七十七段 盛大な法事 七十五むかし男、いせの国にゐていきて、あはんといひければ女 大よどの濱におふてふみるからに心はなぎぬかたらはねども とひいて、ましてつれなかりければ男 袖ぬれてあまのかりほすわたつ海のみるを逢にて山んとやする女岩まより生るみるめしつれなくはしほひ塩みちかひも有なん又男泪にてぬれつゝしぼる世の人のつらき心は袖のしづくか よにあふ事かたき女になん。...
View Article鴨長明方丈記之抄 世の有にくき事4 その間折々の違ひ目に
なり。其間折々のたがひめに、をのづから みじかき運をさとりぬ。すなはち五十 の春をむかへて家を出世をそむけり もとより妻子なけれは捨てがたきよすがも なし。身に官禄あらず。何に付てか執 をとゞめん。空しく大原山の雲にいくそ ばくの春秋をかへぬる爰に六十の露 きえがたにをよびて、更に末葉のやど りをむすベること有。いはゞ狩人の一夜の 宿を作り老ひたるかいこの眉をいとな...
View Article読癖入伊勢物語 八十二〜八十四段
八十二段 交野の桜 をり、みこ達おはしまさせて、夜一よ酒のみし遊て、夜あけもてゆく ほどに、此殿のおもしろきをほむる哥よむ。そこに有けるかたゐ翁 板敷の下にはいありきて、人にみなよませはてゝよみける。 塩がまにいつかきにけん朝なぎにつりする舟はこゝによらなん となんよみけるは、みちの国にいきたりけるに、あやしく面白所〃おほ かりけり。わがみかど六十よこくの中に、塩がまといふ所ににたる所...
View Article絹本伊勢物語 八橋 天知書色紙コレクション
伊勢物語 九段 東下り 八橋 かきつ ばたと いふ 五文字を 句のかみに すへて旅の こゝろをよめと いひければよめる からころも きつゝ なれ にし つまし あれば はる/"\ きぬる たびを しぞ 思ふ 天知 書 落款 てるかた 池田輝方? 書 天知 星野天知?令和2年7月26日 參點參壱/弐枚
View Article絹本伊勢物語 芥川 天知書色紙コレクション
伊勢物語 六段 芥川又は鬼の一口 新古今和歌集巻第八 哀傷歌 題知らず 在原業平朝臣 白玉か何ぞと人の問ひしとき露とこたへて消なましものを 読み;しらたまかなにぞとひとのといしときつゆとこたえてけなましものを 意味:あれは真珠の玉ですかと聞かれて露ですよと答えた人は今はもう露のように消えてしまった。そんなことならもっと夢のある違うように言うべきだった。...
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