玉葉 建久三年五月
一日壬申雨降る。…略…
前齋院(式子内親王)この亭に渡らるべし《法皇の処分によるなり》と云々。仍つて兼親を以て使となし、右大臣並びに經房卿に触れ遣はす《件の卿、かの齋院の御見たりと云々》。夜に入り歸り來たり云はく、
右大臣云はく、公家の御沙汰、法住寺の萱御所、若しは西八條泉御所等、齋院暫くおはします。尤も然るべし。但しかの宮の事進退する能はず。戸部に触れ仰せらるべしと云々。
經房云はく、日來事の由を申すべき旨、頻りに仰せあり。然れども心無きに依り申し出でずと云々。今この仰せあり。早くかの宮に申し、御返事を申すべし。若し渡御すべくば、五月忌あり。六月渡り給ふべしと云々。…略…