正月になりぬ。御位ゆずり申させ給ひて大炊の御門の前齋院の御所に移り住ませ給ふ。いまだほういはじめ無き程なれば、變はる所なき姿どもなり。
内侍所の還らせ給ひしぞ、思ひしよりけに別れの涙ところせきまで侍りし。御剱、しるしの筥、内侍取りて御階より下りて渡し奉りし程、出でさせ給ふまヽに、内侍所をやぶりのヽしりなどせし、
さばかり、あした夕べに拝し奉りなどせしものを、あらぬさまなることかな。
とあきれてぞおぼえ侍りし。
内侍所の還らせ給ひしぞ、思ひしよりけに別れの涙ところせきまで侍りし。御剱、しるしの筥、内侍取りて御階より下りて渡し奉りし程、出でさせ給ふまヽに、内侍所をやぶりのヽしりなどせし、
さばかり、あした夕べに拝し奉りなどせしものを、あらぬさまなることかな。
とあきれてぞおぼえ侍りし。