さんぼうのしゆんじ しんじん 山房春事 岑参 りやうゑんじつぼらんひのあ、きよくもくしやうじやうたりりやうさんかていじゆは 梁 園 日 暮 亂 飛 鴉 極 目 蕭 條 三 両 家 庭 樹 ずしらひとさりつきることを、しゆんらいかへつてひらくきうじのはな 不 知 人 去 盡 春 来 還 發 舊 時 花
いにしへははんじやうな事でありつるふが今は人のゆきゝもなくひぐれがたにはからすがむれとんでいる極目とむかふ
のはてまで目をきわめて見ればしやう/\とことのさびしくたゞ野人のいゑいが二三げんもみゆるばかりじや。 この処になんのきもなくある木はいにしへのりやうゑんのにわ木なれどもそのにわをあいしたひともすぎさり だれあいする人もなけれどはるになればむかしの枝にひらき見る人もない。くわしくは講釈の本を見るべし。
山房春事 岑参 梁園日暮乱飛の鴉、 極目蕭条たり三両家。 庭樹は知ず人去り尽きることを。 春来還って発(ひら)く旧時の花。 意訳 昔の漢の孝王の梁園だった所は、日暮となれば鴉が乱れ飛んでいる。 見渡す限り、荒涼とした風景の中には、家が二三あるだけ。 しかし、庭樹は知ないのであろう、人々が去り誰もいなくなったことを。 春が来くれば、また昔と同じ様に花が開いている。 ※山房 山の中の庵の一般名詞と、作者が昔住んでいた河南の小室山中の家のことと言う説がある。 ※梁園 漢の文帝の皇子、梁の孝王の荘園。河南省商邱市にあった。一流の文人を招いてサロンとしていた。 ※極目 見渡限り。 ※蕭条 寂しい様子。 唐詩選画本 七言絶句 巻第五