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Channel: 新古今和歌集の部屋
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雑歌中 聖庵不在 恵慶集上

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上巻 11頁オー11頁ウ 中院通村筆

 (いなりにうたよみてたて

  まつるときゝてしものやしろに)

いなりのやみつのたまがきうちたゝき

わがねぎ事も神もこたへよ

  なかのやしろ

いなり山みつすぎなかにますかゞみ

わがことたてゝたのむかひあれ

  かみの社に

思事ならざらめやはちはやぶる

神のみまへのみくまぐさなり

  ふかき山にすむひじりの
           もとに

  まかりてたづぬるにあむ

  じちのとをゆひて人も

  なかればかへるとてかきつく

草のいほりさしてきつれどきみま
            さで
かへるみやまのみちのつゆけき

  ひじり返し

あれはてゝ風もはらはぬ草のいほり

我はなくともつゆはもりけむ

  ある所にかたわにて草合

 (するに)

 

 

  稲荷に歌よみて奉ると聞きて、下の社に
稲荷のや瑞の玉垣うちたたき我がねぎ事も神も応へよ

  中の社
稲荷山みつ杉中に増鏡我がことたてて頼む甲斐あれ

  上の社に
思ふ事ならざらめやはちはやぶる神のみまへのみくまぐさなり

  深き山に住む聖のもとにまかりて尋ぬるに
  庵室(あむじち)の戸を結ひて人もなかれ
  ば帰へるとて書きつく
草のいほりさして来つれど君まさでかへる深山の道の露けき

新古今和歌集巻第十七 雑歌中
  深き山に住み侍りける聖のもとに尋ね罷りた
  りけるに庵の戸を閉ぢて人も侍らざりければ
  歸るとて書きつけける
                 恵慶法師
苔の庵さして来つれど君まさでかへるみ山の道ぞつゆけき

よみ:こけのいおりさしてきつれどきみまさでかえるみやまのみちぞつゆけき 隠 有定隆雅

意味:苔が生す程古びた僧の庵を目指してやって来たけど、君は居なかったので、帰る山路は随分と悲しかったよ。

備考:恵慶集では、初句は「草の庵」。歴博蔵伝冷泉為相筆、東京大学蔵山崎宗鑑筆では、恵慶集と同じ「道の」となっている。露は苔の縁語で涙を暗示。

  ひじり返し
荒れはてて風も払はぬ草の庵(いほり)我はなくとも露はもりけむ

新古今和歌集 同上
  聖後見て返し       (聖)
荒れ果てて風も障らぬ苔の庵にわれはなくとも露はもりけむ

よみ:あれはててかぜもさわらぬこけのいおにわれはなくともつゆはもりけむ 隠 有定隆雅

意味:荒れ果てて、風も何も遮らず通り過ぎて行く苔生した庵では、私が居なくても滴り落ちてくる露が留守しているですよ。だから露ぽかったのですよ。

備考:もりは、漏りと守りの掛詞。

  ある所にかたわにて草合するに

 


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