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Channel: 新古今和歌集の部屋
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俳諧七部集 春の日 三月十六日且藁が田家にとまりて 蔵書

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春の日
      三月十六日且藁が田家に   とまりて       野水 蛙のみきゝてゆゝしき寐覚かな 額にあたるはる雨のもり     且藁 蕨烹る岩木の臭き宿かりて    越人 まじ/\人をみたる馬の子    荷兮 立てのる渡しの舟の月影に    冬文 芦の穂を摺る傘の端       執筆
ウ 礒ぎはに施餓鬼の僧の集りて   且藁 岩のあひより藏みゆる里     野水 雨の日も瓶焼やらん煙たつ    荷兮 ひだるき事も旅の一つに     越人 尋よる坊主は住まず錠おりて   野水 解てやをかん枝むすふ松     冬文   今宵は更たりとてやみぬ。   同十九日荷兮室にて
  咲わけの菊にはおしき白露ぞ   越人 秋の和名にかゝる    順   且藁 初厂の声にみづから火を打ぬ   冬文 別の月になみたあらはせ     荷兮 跡ぞ花四の宮よりは唐和にて   且藁 春ゆく道の笠もむつかし     野水 二 永き日や今朝を昨日に忘るらん  荷兮 簀の子 茸生ふる五月雨の中   越人
  紹鴎か瓢はありて米はなく    野水 連哥のもとにあたるいそがし   冬文 瀧壷に柴押まげて音とめん    越人 岩苔とりの篭にさげられ     且藁 むさほりに帛着てありく世の中は  冬文 莚二枚もひろき 我 菴     越人 朝毎の露あはれさに麥作ル    且藁 碁うちを送るきぬ/\の月    野水
  風のなき秌の日舟に網入よ    荷兮 鳥羽の湊のおどり笑ひに     冬文 ウ あらましのざこね筑广も見て過ぬ  野水 つら/\一期聟の名もなし    荷兮 我春の若水汲に昼起て      越人 餅を喰つゝいはふ君か代     且藁 山は花所のこらず遊ふ日に    冬文 くもらずてらず雲雀鳴也     荷兮       【初折】   〔表〕 かはづのみききてゆゆしきねざめかな  野水(発句  春) ひたひにあたるはるさめのもり     且藁(脇   春) わらびにるいはきのくさきやどかりて  越人(第三  春) まじまじひとをみたるうまのこ     荷兮(四句目 雑) たちてのるわたしのふねのつきかげに  冬文(五句目 秋月) あしのほをするからかさのはし     執筆(六句目 秋)   〔裏〕 いそぎはにせがきのそうのあつまりて   且藁(初句  秋) いはのあひよりくらみゆるさと     野水(二句目 雑) あめのひもかめやくやらんけぶりたつ  荷兮(三句目 雑) ひだるきこともたびのひとつに      越人(四句目 雑) たずねよるぼうずはすまずぢやうおりて  野水(五句目 雑) ときてやをかんえだむすぶまつ     冬文(六句目 雑) さきわけのきくにはおしきしらつゆぞ  越人(七句目 秋) あきのわみやうにかゝるしたがふ    且藁(八句目 秋) はつかりのこゑにみづからひをうちぬ  冬文(九句目 秋) わかれのつきになみだあらはせ     荷兮(十句目 秋恋月) あとぞはなしのみやよりはからわにて  且藁(十一句 春恋花) はるゆくみちのかさもむつかし     野水(十二句目 春) 【名残の折】   〔表〕 ながきひやけさをきのふにわするらん  荷兮(初句  春) すのこたけおふるさみだれのなか    越人(二句目 夏) ぜうおうがふくべはありてこめはなく  野水(三句目 雑) れんがのもとにあたるいそがし     冬文(四句目 雑) たきつぼにしばおしまげておととめん  越人(五句目 雑) いはこけとりのかごにさげられ     且藁(六句目 雑) むさぼりにきぬきてありくよのなかは  冬文(七句目 雑) むしろにまいもひろきわがいほ     越人(八句目 雑) あさごとのつゆあはれさにむぎつくる  且藁(九句目 秋) ごうちをおくるきぬぎぬのつき     野水(十句目 秋月) かぜのなきあきのひふねにあみいれよ  荷兮(十一句 秋) とばのみなとのおどりわらひに     冬文(十二句目 秋)   〔裏〕 あらましのざこねつくまもみてすぎぬ  野水(初句  雑恋) つらつらいちごむこのなもなし     荷兮(二句目 雑恋) わがはるのわかみづくみにひるおきて  越人(三句目 春) もちをくひつついはふきみがよ     且藁(四句目 春) やまははなところのこらずあそぶひに  冬文(五句目 春花) くもらずてらずひばりなくなり     荷兮(挙句 春)     ※和名にかゝる順 源順が著した和名類聚抄   ※四の宮 京都山科にあった仁明天皇第四皇子の人康親王の山荘があった。 ※唐輪 唐子髷で、髻の上に輪をいくつか作る桃山時代に流行った明風の髷。   ※紹鴎が瓢 堺の茶人。利休の師。その愛用した瓢で高価な物。   ※柴押まげて 井蛙抄にある京極為教の故事。西園寺別邸の吉田泉殿で催された連歌会へ為家は為教を伴い伺候し、滝の音が耳障りであったところを為教が機転を効かせて滝を塞いだという逸話より。   ※ざこね 京都大原の江文神社の奇祭。 ※筑广 近江の筑摩神社の奇祭。鍋冠祭。   ※くもらずてらず 新古今和歌集巻第一 春歌上 大江千里
照りもせず曇りもはてぬ春の夜の朧月夜にしくものぞなき より

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