しつかさを数珠も思はす網代守 丈草
御白砂に侯す
膝つきにかしこまりゐて霰かな 史邦
棕櫚の葉の露に狂ふあらし哉 野童
伊賀
鵲 の橋よりこほす 霰かな 蜂禾
呼かへす鮒売見えぬあられかな 凡兆
膳所
みそれ降 音や朝飯の出来る迄 畫好
初雪や 内に居さうな人 は 誰 其角
はつ雪に鷹部屋のそく 朝 朗 史邦
霜やけの手を吹てやる雪まろけ 羽紅
わきも子か 爪紅粉残す雪まろけ 探丸
下京や雪つむ うへの 夜の雨 凡兆
なか/\ と川一筋や雪の原 仝
信濃路を過るに
雪ちるや穂屋 の 芒の刈残し 芭蕉
草庵の留守をとひて
衰老は簾もあけす 庵 の 雪 其角
尾張
雪の日は竹の子笠そまさりける 羽笠
長崎
誰とても健ならは雪のたひ 卯七
ひつかけて行や雪吹のてしまこさ 去来
青亜追悼
乳のみ子に世を渡したる師走哉 尚白
から 鮭も 空也の痩も寒の内 芭蕉
鉢たゝきあはれは顔に似ぬものか 乙刕
一月は我に米かせ 鉢たゝ き 丈草
住吉奉納
夜神楽や 鼻 息白し面ンの 内 其角
伊賀
節季候に 又のそむへき事もなし 順琢
仝
家々やかたちいやしき すゝ拂 祐甫
乙刕か新宅にて
人に家を 買せて 我は年 忘 芭蕉
弱法師 我門ゆるせ 餅 の 札 其角
歳の夜や曽祖父をきけば小手枕 長和
うす壁の 一重は何かとしの宿 去来
くれて行年のまうけや伊勢くまの 仝
大としや手のおかれたる人こゝろ 羽紅
しづかさをずずもおもはずあじろもり 丈草(網代守:冬) ひざつきにかしこまりゐるあられかな 史邦(霰:冬) しゆろのはのあられにくるふあらしかな 野童(霰:冬) かささぎのはしよりこぼすあられかな 蜂禾(霰:冬) ※鵲の橋 新古今和歌集巻第六 冬歌 題知らず 大伴家持 鵲のわたせる橋に置く霜のしろきを見れば夜ぞ更けにける 読み:かささぎのわたせるはしにおくしものしろきをみればよぞふけにける 有定隆雅 隠 意味:七日月が沈み、かささぎの渡す天の川の橋に霜のような星々が輝き出すと夜も更けてきたなあ よびかへすふなうりみえぬあられかな 凡兆(霰:冬) みぞれふるおとやあさげのできるまで 画好(霙:冬) はつゆきやうちにゐさうなひとはたれ 其角(初雪:冬) はつゆきにたかべやのぞくあさぼらけ 史邦(初雪:冬) しもやけのてをふいてやるゆきまろげ 羽紅(雪まろげ:冬) わぎもこがつまべにのこすゆきまろげ 探丸(雪まろげ:冬) しもぎやうやゆきつむうへのよるのあめ 凡兆(雪:冬) ながながとかはひとすぢやゆきのはら 凡兆(雪:冬) ゆきちるやほやのすすきのかりのこし 芭蕉(雪:冬) ※穂屋の芒 諏訪大社の御射山祭で、神幸の御仮屋に葺く薄。 すゐらうはすだれもあげずあんのゆき 其角(雪:冬) ※簾もあげず 香炉峰の雪は簾を撥げて看る(白氏文集、和漢朗詠集:白居易) ゆきのひはたけのこがさぞまさりける 羽笠(雪:冬) だれとてもすこやかならばゆきのたび 卯七(雪:冬) ひつかけてゆくやふぶきのてしまござ 去来(吹雪:冬) ※てしまござ 豊島茣蓙 摂津国豊島郡(池田市、豊中市周辺)に産した藺 (い) ござ。酒樽 を包んだり、雨具に用いたりした。てしまむしろ。としまむしろ。 ちのみごによをわたしたるしはすかな 尚白(師走:冬) ※青亜 僧青亜 - 貞享2年(1685年)入門、初期近江蕉門の一人。大津の僧侶、名は玄甫。 からざけもくうやのやせもかんのうち 芭蕉(寒:冬) はちたたきあはれはかほににぬものか 乙州(鉢叩き:冬) ひとつきはわれにこめかせはちたたき 丈草(鉢叩き:冬) よかぐらやはないきしろしめんのうち 其角(夜神楽:冬) せきぞろにまたのぞむべきこともなし 順琢(節季候:冬) ※節季候 せきぞろ 《「節季 (せっき) にて候」の意》江戸時代の門付けの一。歳末に三、四人一組でウラジロの葉をつけた笠をかぶり、赤い布で顔を覆い、四つ竹などを鳴らしながら「せきぞろ、せきぞろ」とはやして家々を回り、米銭 (べいせん) を請うた。せっきぞろ。《季 冬》 いへいへやかたちいやしきすすはらひ 祐甫(煤払:冬) ひとにいへをかはせてわれはとしわすれ 芭蕉(年忘:冬) よろほうしわがかどゆるせもちのふだ 其角(餅の札:冬) としのよやひぢぢをきけばこてまくら 長和(歳の夜:冬) うすかべのひとへはなにかとしのやど 去来(歳の宿:冬) くれてゆくとしのまうけやいせくまの 去来(暮れて行く年:冬) おほどしやてのをかれたるひとごころ 羽紅(大歳:冬)