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恋歌三 恋の恨み 筆者不明断簡コレクション

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              前大僧正慈円

たゞ頼めたとへば人の偽を重てこそは又もうらみめ

女をうらみていまはまからじと申て後なを

忘がたくおぼえければつかはしける

              左衛門督家通

つらしとはおもふ物からふし柴のしばしもこりぬ心なりけり

たのむると待ける女わづらふこと侍にける

をこたりて久我内大臣のもとにつかはし

ける          よみひとしらず

たのめこしことのはばかりとゞめ置て浅茅が露と消えなまし
                          かば

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かへし         久我内大臣

哀にも誰かは露も思はましきえ残るべき我身ならねば

だいしらず       小侍従

つらきをも恨みぬわれにならふなようき身を知らぬ
                  人もこそあれ
              殷富門院大輔

なにかいとふよもながらへじさのみやはうきにたへたる命成
                         べき
              刑部卿頼輔

戀しなむ命は猶もおしき哉おなじ世にあるかひはなけ
                      れど
              西行ほうし

哀とて人の心の情あれな数ならぬにはよらぬ歎きを

新古今和歌集巻第十三 恋歌三

 攝政太政大臣家百首歌合に契戀の
 こころを
                  前大僧正慈円
ただ頼めたとへば人のいつはりを重ねてこそは又も恨みめ

よみ:ただたのめたとへばひとのいつわりをかさねてこそはまたもうらみめ 隠削

意味:ただ信じてほしい。例えば私が偽りを重ねたとしたら今度は恨んでもかまわないですから。

備考:六百番歌合。


 女を恨みて今はまからじと申して後
 猶忘れがたく覚えければ遣はしける
                  左衛門督家通
つらしとは思ふものからふし柴のしばしもこりぬ心なりけり

よみ:つらしとはおもうものからふししばのしばしもこりぬこころなりけり 隠

意味:貴女の仕打ちが辛いとは思うものの、(伏柴の)(もう逢わないとは言ったが、)しばしも懲りない貴女への恋心だなあ

備考:伏柴のは、しばしの序。懲り、樵りの掛詞。柴と樵は縁語。


 頼むること侍りける女わづらふ事侍
 りけるがおこたりて久我内大臣のも
 とに遣はしける
                  よみ人知らず
たのめこし言の葉ばかり留め置きて浅茅が露と消えなましかば

よみ:たのめこしことのはばかりとどめおきてあさじがつゆときえなましかば 隠

意味:「私を頼りにしてください」とのうれしいお言葉だけを形見として、浅茅に置く露のように消えてしまったら、哀れと貴方は思ってくれるでしょうか。

備考:葉、置き、消えは露の縁語。


 返し
                  久我内大臣
あはれにも誰かは露を思はまし消え残るべきわが身ならねば

よみ:あわれにもだれかはつゆをおもわましきえのこるべきわがみならねば 隠

意味:貴女がはかなく死んだとしても他の誰が少しでも哀れと思いましょうか。私自身は独りで生きられるものではないのですから、貴女の後を追っていたでしょう。

備考:


 題知らず
                  小侍従
つらきをも恨みぬわれに習ふなようき身を知らぬ人もこそあれ

よみ:つらきをもうらみぬわれにならうなようきみをしらぬひともこそあれ 隠

意味:独りで居る辛さを貴方へ恨まない私に慣れないでください。自分自身が憂き身だということを知らない人もいるのですから。

備考:正治二年初度百首。参考 いかばかり人のつらさを恨みまし憂き身のとがと思ひなさずは(詞花集 賀茂成助)


 題知らず
                  殷富門院大輔
何か厭ふよも長らへじさのみやは憂きに堪へたる命なるべき

よみ:なにかいとうよもながらえじさのみやはうきにたえたるいのちなるべき 隠

意味:死ぬ事を何厭うものがありましょうか。私の命が長らえる事は無いでしょう。そういつまでも貴方の辛い仕打ちに耐えられる命でも無いしょうから。

備考:参考歌 思ひ出でて誰をか人の尋ねまし憂きに耐えたる命ならずば (千載集 小式部)


 題知らず
                  刑部卿頼輔
恋ひ死なむ命は猶も惜しきかな同じ世にあるかひはなけれど 隠

よみ:こいしなむいのちはなおもおしきかなおなじよにあるかいはなけれど 隠

意味:恋に死ぬだろうが、やはり命は惜しいなあ。貴女と同じ世にある甲斐は無いけれど。

備考:仁安二年平経盛家歌合


 題知らず
                  西行法師
あはれとて人の心のなさけあれな数ならぬにはよらぬ歎を

よみ:あわれとてひとのこころのなさけあれなかずならぬにはよらぬなげきを 隠

意味:可哀想だとあの人が同情してくれるといいな。ものの数にも入らない私だってこんなに恋の思いで悩んでいるのだから。

備考:


10月31日 壱


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