くろたに黒谷きんかいくはうみやうじ金戒光明寺
紫雲山金戒光明寺黒谷は浄土鎮西四ケの一本寺なり。元祖圓光大師の
旧蹟にして叡山西塔の黒谷をうつして新黒谷と称す。本尊には元祖 大師の像を安置す。脇壇の厨子には親鸞聖人の像あり。共に自 作なり。阿弥陀堂の本尊は惠心の作なり。観音堂の本尊は行基の 作にして千手の像を安置す。(洛陽観音 巡りの其一也)勢至堂は法然上人の廟塔なり。 (則勢至菩薩の化現なるの 謂れ也.臺座の下に五輪の石塔有)熊谷堂には蓮生法師自作の像太夫敦盛の畫像を 安置す。三重塔の文殊菩薩は日本三文殊の其一なり。(丹後切戸 (維摩居士 和州安陪)脇士は 優波利尊者 優墳王善財童子等の四像を安置す.これを 世に天照春日八幡住吉の神像也といふ.大に非也)紫雲石は塔の北にあり。元祖大師一宗 開發の時此石より紫雲たなびき異香薫じけるとなり.(紫雲山の號は 此謂による也)鎧池鎧 掛松は熊谷次郎直實上人の教へに帰人し着せし鎧を此池水にて洗ひ松 に懸け置しとなり.(蓮生法師は承元二年九月十四日往生すべしと諸方へ自身触まはり たまひしかば結縁の道俗馳集り庵を囲繞し共に髙聲に念佛 となへ袈裟衣たゞしくかけ西に向かひ 其日の未刻におはりをとげけるとなん)元祖大師鴨大神宮の神勅によって浄 土安心の要文を書し給ふ。是を一枚起請といふ。(當山㐧一の什宝なり。毎歳六月廿五日 虫干の日に是を出して詣人に拝せしむ)