いつししやうゑんこらすこうをうんうふさんまけてたんてう一枝濃艶露凝香雲雨巫山枉斷腸しやもんすかんきゆうたれかゑんにたる事をかれんのひゑんよるしんそうに借問漢宮誰得似可憐飛燕倚新粧
ほたんのたつたひとゑたのいろつやのうるわしいにつゆなとこりうかんてある。これてきひかとしさはりのことをもたせたてうとこのはなのことくびじんもうるわしい事じや。きひをゑたから見れはふさんのしんじよをしたふたはまげてたんちよう/\したふたものじや。ふさんのしんしよはそのじようおうゆめにしんによとちきりくもとなりあめとなりこよふといふた事なり。きびがやうなひじんはとうだいにはない。かんきゆうにはひしんかおらかつたといふとふて見たいことのがやかわいらしいちやらひゑんなとゝいふやうなをのかけわいてもしてきたならはすこしはにやうかなかくすかほてきてはおよひもないよるといふはたの○にすることひゑんはかんのせいていのきさきなり。
清平調詞三首 其二
李白一枝の濃艶、露香を凝らす。雲雨巫山、枉(ま)げて断腸。借問す、漢宮誰か似たるを得む。可憐の飛燕、新粧に倚(よ)る。
意訳一枝の濃艶の牡丹ような楊貴妃様は、その華の露が香りを凝結させたようだ。その美しさに比べれば、懐王が出会った巫山の女神との別れに断腸の思いで悔しがったのは、無駄な事。ところで聞くけど、漢朝の後宮で、誰か楊貴妃様のような美人はいたかい?楊貴妃様は、まるで可憐な趙飛燕が、化粧したてで、誇り示している姿だ。
※雲雨巫山 巫山は四川省東端に有る山で、楚の懐王が山中に、昼寝の夢で美女と契るが、その美女は巫山の女神と名乗り、朝は雲となり、夕べは雨となると告げた。楚の宋玉の高唐賦に見える話。
※断腸 夢から覚めると懐王は断腸の思いで別れを悔しがった。
※飛燕 漢の武帝の寵妃趙飛燕。身分の低い家の娘だったが、皇后まで上り詰めた美女。李白は、楊貴妃を貧しい趙飛燕になぞらえたと玄宗の近臣高力士に讒言された。
※新粧に倚る 化粧したてで、誇らかにする。
唐詩選畫本 七言絶句 巻一