おくるせつだいかおもむくあんりくに おうせうれい 送薛大赴安陸 王昌齢 しんとうのうんうくらしせうさんにせんかくのりゆうそちのかんばせ 津頭雲雨暗湘山遷客離憂楚地顏 はるかにおくるへんしうをあんりくぐんてんへんいづれのところかぼくりやうくはん 遙送扁舟安陸郡天邊何處穆陵關 今こなたをおくるわたしはで見ればおりふし風雨のしふんゆへせうさんなともうんうにとぢられて 見へぬ.そちのかんはせとは楚辞ではうれいにかゝるといふ事になるがこゝではやはりりへつのうれいをいふ. われさせんの身なれはこのそこくのちに顔色進衰の境ておくれはわが身にそへて一入かなしい。舟にのりあん りくへゆくおおくる事じや。あまりなこりおしさにあとかけを見れは雨がくらふしてあんりくくんよりほくりやう くはんは高い処ゆへこの処より天にそびへ見ゆるが今日は雨や雲てみへぬゆへ別してなこりおしい。
薛大の安陸に赴くを送る 王昌齢 津頭の雲雨、湘山暗し。 遷客憂えに離(かか)る楚地の顏(かんばせ)。 遙かに扁舟を送る安陸郡。 天辺何れの処か穆陵関。
意訳 舟着場の女神が降らせる雲雨で、洞庭湖に浮かぶ君子島も暗くなっている。左遷された私は、憂いに沈んで楚の屈原の様に憔悴しきっている。薛大君の乗った小舟は遥か遠くなって、安陸郡へ向かっている。
地平線の向こうのどの辺りに穆陵関はあるのだろうか?
※薛大 不詳。大は、排行で一族の世代で最初に生まれたと言う呼び名。日本の太郎に該当。
※安陸 湖北省孝感市の安陸市。
※津頭 舟着場。
※湘山 洞庭湖に有る君山島。
※遷客 左遷された王昌齢の事。楚の屈原の意も含ませる。
※憂えに離る 楚辞『山鬼』の「雷填填兮雨冥冥,猨啾啾兮狖夜鳴。風颯颯兮木蕭蕭,思公子兮徒離憂」による。
※楚地の顏 措辞の「漁夫」の屈原の「顔色憔悴、形容枯槁」のような顔。
※穆陵関 安陸県の東北にあった関。場所は未詳。
長崎ランタン祭
唐詩選畫本 七言絶句 巻三