(ウェッブリブログ 2010年05月12日)
亜麻色の髪の乙女 ドビュッシー
月の夜
川底の織り成す光の綾
蟹達と共に眠る
新古今和歌集 巻第十八 菅原道真
海ならずたたへる水の底までに淸きこころは月ぞ照らさむ
宮沢賢治 やまなし
小さな谷川の底を写した二枚の青い幻燈げんとうです。
十二月
蟹の子供らはもうよほど大きくなり、底の景色も夏から秋の間にすつかり變りました。
白い柔かな圓石もころがつて来小さな錐の形の水晶の粒や、金雲母のかけらもながれて来てとまりました。
そのつめたい水の底まで、ラムネの瓶の月光がいつぱいに透とほり天井では波が青じろい火を、燃したり消したりしてゐるやう、あたりはしんとして、たゞいかにも遠くからといふやうに、その波の音がひゞいて来るだけです。
蟹の子供らは、あんまり月が明るく水がきれいなので睡らないで外に出て、しばらくだまつて泡をはいて天井の方を見てゐました。