てつのくにのいまの京にいたり。
ところのありさまをみるにそ
の地ほとせはくて条里をわるに
たらす。きたはやまにそひて
たかくみなみはうみにちかく
てくたれり。なみのをとつねに
かまひすししほかせことには
けし。内裏はやまのなかなれはか
のきのまろとのもかくやとおほし
(頼りあり)
て、津の國の今の京に至り。
所の有樣を見るに、その地、ほど狭くて条里を割るに足らず。
北は山に添ひて高く、南は海に近くて下れり。
波の音、常に喧し、潮風、殊に激し。
内裏は山の中なれば、彼の木の丸殿もかくやと思し
(参考)大福光寺本
テツノクニノ今ノ京ニイタレリ
所ノアリサマヲミルニ南ハ海チカクテクタレリ
ナミノヲトツネニカマヒスシクシホ風コトニハケシ
内裏ハ山ノ中ナレハ彼ノ木ノマロトノモカクヤト