（ウェッブリブログ 2009年07月19日）
元久詩歌合
題
水郷春望 山路秋行
攝政太政大臣 前上総介藤原朝臣家隆
良輔 大納言殿 左衞門督源朝臣通光
資實 中納言 前大僧正慈圓
大藏卿藤原朝臣有家
沙弥蓮性
長兼朝臣 藏人頭左中辨 左近衞中將藤原朝臣定家
在高朝臣 兵庫頭源朝臣家長
頼範朝臣 大納言局
宗業朝臣 散位藤原朝臣保季
爲長朝臣 左近衞少將藤原朝臣雅經
盛經 女房丹後
宗行 宮内權少輔藤原朝臣行能
成信 左近衞權少將源朝臣具親
信定 散位藤原朝臣業清
孝範 鴨長明
家宣 左近衞權中將藤原朝臣良平
行長 左衞門少尉藤原朝臣秀能
宗親 俊成卿女
親經 左大辨 左馬頭藤原朝臣親定 御製也
詩歌合 水郷春望
一番 左勝 攝政
土俗地低春草底 海仙樓遠曙雲間
右 家隆
さほ姫の朝けの袖やまがふらん霞も白き宇治の川波
二番 左勝 攝政
沙村遥屬煙霞境 水澤半呑花柳山
右 家隆
にほの海の霞ふきゆく春風に浪もいくよのしがの花園
三番 左 良輔
渭北曉霞消雁陣 江南春柳隔漁郷
右勝 通光
みしま江や霜もまだひぬ蘆の葉につのぐむほどの春風ぞ吹く
四番 左勝 良輔
百花亭外胡天遠 五鳳樓前伊水長
右 通光
里人の玉もの袖やせく春の霞ぞよどむゐでのしがらみ
五番 左持 資實
海燕翅低花嶼遠 潮鶏聲曙柳煙孤
右 僧正
志賀の浦の浪よりかすむ明ぼのに山ふきおろす春の松風
六番 左 資實
潯陽春色連鑪地 抗縣風光屬鏡湖
右 僧正
難波江の蘆の枯葉の春風に秋みし露の袖にこぼるる
七番 左持
風頭松動客帆遠 雲外雁歸孤島賖
右 有家
みずしらずたがすむかたぞいさり火のほのぼの明くる春のよの月
八番 左勝
江縣月清天又水 湖山春深浪將花
右 有家
志賀の浦に比良の山おろし吹きぬらん花と散りかふ春のさざ波
九番 左勝
海岸孤松雲外見 江村遠柳雨初新
右 蓮性
かつらのや川ぞひ柳浪かけて梅津ははやく春めきにけり
十番 左勝
意留何處放遊客 樂在其中漁釣人
右 蓮性
いづくとも霞ながれてみえぬかなたかせのよどの曙の空
十一番 左持 長兼
千程春浪駅船路 一穂暮煙潮戸堤
右 定家
あじろ木にさくらこきまぜ行く春のいざよふ浪もえやはとどむる
十二番 左勝 長兼
遠雁消霞湖月上 驚鵜拍水海雲低
右 定家
宮木守なぎさの霞たなびきて昔も遠き志賀の花ぞの
十三番 左 在高
沙村漁税輸霞色 浪駅棹歌和鳥聲
右勝 家長
隔てつるまきのを山もたえだえに霞ながるる宇治の川なみ
十四番 左持 在高
靑草湖遥舟一隻 紅桃浦遠路千程
右 家長
久かたの中なる川は名のみして春は霞におぼろなるそら
十五番 左持 頼範
雨展渚蒲裙帶葉 風翻江柳麹塵波
右 大納言局
志賀の浦のさざ浪白く成行くはながらの花に風や吹くらん
十六番 左 頼範
煙村酒旆穿花見 夜岸漁舟篝火過
右 大納言局
いく千世もたえぬみなせの水の面にのどかにすめる春の夜の月
※鈎→釣 群書類従によりあらためた。