一 よみ人しらず
八雲云。清輔云。讀人不知ト云ニ有三樣。一ハ不
知。二ニハ雖知凡卑。三ニハ詞など有憚哥なり。
古今蝉丸哥不書名後撰書之。如此類多。
詞花西行如此。又千載平家依勅勘者
不各欠。
一 風まぜに雪はふりつゝしかすがに霞たなびき春は
きにけり
増抄云。かぜまぜとは、冬は一向にかきくれて雪
がふりたるが、春になりては春風がまじり
てやがてはれたる空も有て、霞がたなび
きてみゆるとなり。初春の景氣也。さる
故に冬のごとく雪ふれど、春のきどくにかすみ
たるよし也。しかすがさすかと同也。つゝと云詞にて、
心をこめたり。冬のごとく雪はふれども、春風
がまじりて、やがてはれてかすめるとの
心こめり。
頭注
○風 河圖云。風
者天地之使。天
命包云天地怒
而為風。
※河図 中国で、伏羲氏の世に、黄河から現われた龍馬の背上にある旋毛にかたどったという図。これによって天地の変化を占うことができるとし、八封は、これによって作ったという。
※天命包 春秋元命苞(百科知識 台湾)の事であろう。