一 凡河内躬恒 甲斐ノ少目。後任淡路掾。先
祖不知。任丹波権大目。延㐂比人なり。古今撰者
一 いづれをか花とはわかむ古郷のかすがの原にまだ消えぬ雪
増抄云。いづれをとは、雪と花をかけたる詞也。
是は二ながら面白とみたたる哥なり。勝劣が
批判せられぬとのこゝろ也。まだとは未也。
消ぬべき春なれど、いまだきえぬとよろ
こびたる心あり。わかんとは取分てんやいや
とりわけこれぬとの心有べし。ふる
さと、雪のえんにいひたり。さなければかすがの
はらばかりにてよし。此一句あまれるなるべし。
一句もあだにはをかぬ事とみえたり。