へつゝよのなかつきたちて人の
こころもおさまらす。たみのうれへ
つゐにむなしからさりけれはお
なしきとしの冬なをこの京にか
へり給にき。されともこほちわた
せりしいゑともはいかになりに
けるにかこと/\くもとにやうにし
もつくらす。つたへきくいにしへの
かしこき御よにはあはれみを
経つつ、世の中つき立ちて、人の心もおさまらず。
民の憂へ、遂には空しからざりければ、同じき年の冬、猶この京に帰り給にき。
されども、毀ち渡せりし家どもは、如何になりにけるにか、悉く元に樣にしも造らず。
伝へ聞く、いにしへのかしこき御世には、憐れみを
(参考)大福光寺本
ヘツゝ世中ウキタチテ人ノ心モヲサマラス
タミノウレヘツヰニムナシカラサリケレハヲナシキ年ノ冬ナヲコノ京ニ帰リ給ニキ
サレトコホチワタセリシ家トモハイカニナリニケルニカ悉クモトノ様ニシモツクラス
ツタヘキクイニシヘノカシコキ御世ニハアハレミヲ