千歳まで
限れる
松も
今日よりは
君にひかれて
萬代や経む
大中臣能宣(おおなかとみのよしのぶ)921~991三十六歌仙、梨壷五人の一人。四位祭主。後撰和歌集の撰者。11首。
夏歌
題しらず
郭公鳴きつつ出づるあしびきのやまと撫子咲きにけらしな
よみ:ほととぎすなきつついずるあしびきのやまとなでしこさきにけらしな
秋歌上
七夕のこころを
いとどしく思ひ消ぬべしたなばたの別のそでにおける白露
よみ:いとどしくおもいけぬべしたなばたのわかれのそでにおけるしらつゆ
離別歌
田舎へ罷りける人に旅衣遣はすとて
秋霧のたつたびごろも置きて見よ露ばかりなる形見なりとも
よみ:あきぎりのたつたびごろもおきてみよつゆばかりなるかたみなりとも
戀歌一
また通う人ありける女のもとに遣は
しける
われならむ人に心をつくば山したに通はむ道だにやなき
よみ:われならぬひとにこころをつくばやましたにかよわむみちだにやなき
年を經ていひわたり侍りける女のさ
すがにけぢかくはあらざりけるに春
の末つ方いひ遣はしける
幾かへり咲き散る花を眺めつつもの思ひ暮らす春に逢ふらむ
よみ:いくかえりさきちるはなをながめつつものもいくらすはるにあうらむ
戀歌五
春の夜女のもとに罷りてあしたに遣
はしける
かくばかり寝で明しつる春の夜をいかに見えつる夢にかありけむ
よみ:かくばかりねであかしつるはるのよをいかにみえつるゆめにかありけむ
題しらず
葛城やくめ路にわたす岩橋の絶えにし中となりやはてなむ
よみ:かずらきやくめじにわたすいわはしのたえにしなかとなりやはてなむ
雜歌中
返事
身をばかつをしほの山と思ひつついかに定めて人の入りけむ 2 みをばかつおしおのやまとおもいつついかにさだめてひとのいりけむ
雜歌下
題しらず
あしがもの羽風になびく浮草の定めなき世を誰かたのまむ
よみ:あしがものはかぜになびくうきぐさのさだめなきよをたれかたのまむ
題しらず
みづぐきの中にのこれるたきの聲いとしも寒き秋の聲かな
よみ:みづぐきのなかにのこれるたきのこえいとしもさむきあきのこえかな
神祇歌
或所の屏風の繪に十一月神祭る家
の前に馬に乗りて人のゆくところ
榊葉の霜うちはらひかれずのみ澄めとぞ祈る神のみまへに
よみ:さかきばのしもうちはらいかれずのみすめとぞいのるかみのみまえに
令和6年1月21日 壱/八