ときはの山なれども色に出るばかりといふ事
をうつるばかりと読めり。
○深草の里の月かげさびしさも住こしまゝの野べの
秋風
本哥
野とならばうづらとなりて鳴をらんかりにだにやは
君がこざらん
すみこしとは堪忍してありつかといふ也。
俊成卿女
○おほあらきのもりの木のまをもりかねて人だのめなる
秋の夜月
おほあらきのもり山城淀の○所にある名所なり。
人たのめとは人をたらすなりといふこゝろなり。おほ
あらきといふ名に似ず。木ふるきもりにて木の
ま幾月のもりかぬるとよめり。おほといふをおと
ばかりよむなり。おほあらきと讀に侍なり。木の
事によむときはあらきといふならひなり。古今
引
かつこえてわかれもゆくか相坂は人だのめなる名にこそ有
けれ
などよめる々人たのめなり。哥によりてかは
るべし。かつこゑてはかく●●●てなり。
引
木の間よりもりくる月の影みれば心づくしの秋は來に
けり
引
おほあらきの杜の下草老ぬれば駒もすさめずかる
人もなし
総じてはれわたりたる所の月を見るよりひ木の
まなどの月は感性ふかきものなれどもかやうの所の
月おば見る人も侍らずとなり。兼好法師月
●に月はまどうなるをのみよしといふべからず。雨
後の雲まよりあらはれかねたる又覧かけて出る
月に心すむとかげりけにもておそ/\てこゝろ
はづかしく侍り。
※出典不詳。
※秋の夜月→秋の夜の月
※かつこえて~
古今集離別歌
藤原のこれをかが武蔵の介にまかり
ける時に、送りに逢坂を越ゆとてよ
みける 貫之
かつ越えて別れもゆくか逢坂は人だのめなる名にこそありけれ
※木の間より~
古今集秋歌上
題しらず よみ人知らず
この間よりもりくる月の影見れは心づくしの秋はきにけり
※おほあらきの杜の下草~
古今和歌集 巻第十七 雑歌上
おほあらきのもりのした草おいぬれば駒もすさめずかる人もなし
淀川 大荒木