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平家物語巻第十二 三 平大納言の流されの事1

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              三 平大納言のながされの事 九月廿三日平家のよたうの、都のうちにのこりとゞま りたるを、みな国々へつかはさるべきよし、かまくらより公家 へ申されたりければ、さらばつかはさるべしとて、平大納言時 たゞの卿、のとの国、くら人のかみのもと、さどの国、さぬきの 中将ときざね、あきの国、兵部のぜうまさあきら、おきの 国、二位のそうづぜんしん、あはの国、ほつしやうじのしゆ ぎやうのうゑん、かづさの国、けいしゆばうのあじやりゆう○ びんごの国、中納言のりつしちうくはいは、むさしの国とぞ 聞えし。あるひは西海のなみのうへ、あるひはとうくはんの雲 のはて、せんといづくをごせず。こうくはい其ごをわきまへず。 わかれの涙をゝさへつゝ、めん/\におもむかれけん。心のうち                             へい おしはかられてあはれ也。中にも平大納言、時忠の卿 は、けんれいもんゑんのわたらせ給ふ、吉田に參て申されける は御いとま申さんがために、くはん人共じばしのいとまとふて 參りて候。時ただこそせめておもうしく、けふすでにはい所 へおもむき候へ。おなじ都の内にいて、御あたりの御事共をも、 うけ給はらまほしう、ぞんじ候ひしに、かゝる身にまかり なつて候へば、今より後、またいかなる御有樣共にてか、わた らせ給ひ候。わんずらんと、思ひおき參らせ候こそ、さらに行 べきそらもおほえましう候へと、なく/\申されければ"女 院げにもむかしのなごりとては、そこばかりこそおはしつ るに、今はなさけをかけ、とひとふ人も、たれか有べきと   平家物語巻第十二
  三 平大納言のながされの事   九月廿三日、平家の余党の、都の内に残り留まりたるを、皆、国々へ遣はさるべき由、鎌倉より公家へ申されたりければ、さらば遣はさるべしとて、平大納言時忠の卿、能登の国、内蔵人の頭(かみ)信基(のもと)、佐渡の国、讃岐の中将時実、安芸の国、兵部の少輔(ぜう)尹明(まさあきら)、隠岐の国、二位の僧都全真(ぜんしん)、阿波の国、法勝寺の執行(しゆぎやう)能円、上総の国、けいしゆ房の阿闍梨ゆう○備後の国、中納言の律師忠快(ちうくはい)は、武蔵の国とぞ聞えし。或ひは西海の波の上、或ひは東関の雲の果て、前途いづくを期せず。後会其期を弁えず。別れの涙を抑へつつ、面々に赴かれけん。心の内、推し量れて哀れ也。 中にも平大納言時忠の卿は、建礼門院の渡らせ給ふ、吉田に參て申されけるは、 「御暇ま申さんが為に、勘人共、暫(じば)しの暇間、訪ふて參りて候。時忠こそ責めて重うしく、今日既に配所へ赴き候へ。同じ都の内に居て、御辺りの御事共をも、受け給はらまほしう、存知候ひしに、かかる身に罷りなつて候へば、今より後、又、いかなる御有樣共にてか、渡らせ給ひ候。わんずらんと、思ひおき參らせ候こそ、さらに行くべき空も覚えましう候へ」と、泣く泣く申されければ"、女院、 「げにも昔の名残とては、そこばかりこそおはしつるに、今は情けをかけ、訪ひ問ふ人も、誰か有べきと

 

※せんといづくをごせず。こうくはい其ごをわきまへず 和漢朗詠集 餞別  於鴻臚館餞北客序 大江朝綱
前途程遠し。思を鴈山の暮の雲に馳す。
後会期遥なり。纓を鴻臚の暁の涙に霑す。   以下のアンダーラインは、実際の配流地が異なっている。   ※平大納言時忠の卿 平時忠 平時子の弟。能登へ配流。   ※内蔵人の頭信基 平信基 平時子の従兄弟 備後に配流。   ※讃岐の中将時実 平時実 時忠の長男 周防への流罪が決まったが、義兄弟となっていた源義経に接近して配所に赴こうとしなかった。都落ちした義経が同行するが、摂津国大物浦で船が転覆し、離散して京に戻る途上で捕らえられた。その後、鎌倉に護送され上総に配流。   ※兵部の少輔尹明 藤原尹明(ふじわらのただあき/まさあき) 中原師元の娘を室としたが、彼女の母が平忠盛の娘であった関係から平清盛と親しかった。出雲に配流。   ※二位の僧都全真 母方の伯母にあたる平時子の猶子。安芸に配流。   ※法勝寺の執行能円 平時子異父弟。後鳥羽院乳母の藤原範子と結婚、息女には在子(承明門院)・信子(堀川通具室)がいる。備中に配流。   ※けいしゆ房の阿闍梨ゆう○ 不明   ※中納言の律師忠快 門脇中納言教盛の子。伊豆へ配流。

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