つきせぬおもしろさに又この末にはいかなる
おもしろき事ぞあらんとなり。いかなる風とは
いかやうなる風流の事か侍らんといふ事なり。
慈圓
○いつまでか涙くもらで月は見し秋まちえても秋ぞこひ
しき
じゆつくわい
述懐の哥なり。いつまでかとはいつの比までか
なり。秋まちえでもとは當意の秋なり。秋ぞこ
ひしきとはむかしの秋なり。むかし見し
月はなみだくもりざりしに今は老の涙に
月をもやつし侍れば昔の秋のこひしきと
よめり。
式子内親王
○ながめ侘ぬ秋より外のやどもがな野にも山にも月や
すむらん
本哥
さびしさに宿を立ち出てながむればいづくもおなじ秋の
夕暮
ながめわびぬはながめくたびれたる心なり。三千界の
うちいづくも秋ならば悲しき事はのがれん
がたもあるまじければ眺わびぬとなり。野
も山も月のかき所はあるまじと也。定家哥
引
秋よ只眺すてゝも出なましこの里のみのゆくと
思はゞ
※出典 不詳。
※さびしさに~
後拾遺集 秋上
題不知 良暹
寂しさに宿を立ち出でて眺むればいづくも同じ秋の夕暮
※秋よ只~
六百番歌合 秋夕
藤原定家
秋よただながめすてても出でなましこの里をのみ夕べと思はば