新古今和歌集 巻第十二恋歌二
和歌所歌合に依忍増戀といふことを
春宮權大夫公繼
忍ばじよいはまづたひの谷川もせをせくにこそ水まさり
けれ
題不知 信濃
人もまだふみゝぬ山のいはがくれ流るゝ水を袖にせくかな
西行法師
はるかなる岩のはざまに獨ゐて人め思はでもの思はゞや
數ならぬ心のとがになしはてゝしらせでこそは身をも恨め
水無瀬の恋十五首歌合に夏恋
攝政太政大臣
草ふかき夏野わけ行くさを鹿の音をこそ立てね露ぞこぼるる
入道前關白右大臣に侍りける時百首哥
人々によませ侍りけるに忍戀のこころを
読み:しのばじよいわまづたいのたにがわもせをせくにこそみずまさりけり
作者:藤原公継ふじわらんきんつぐ1175~1227実定の子。野宮左大臣と呼ばれる。
読み:ひともまだふみみぬやまのいわがくれながるるみずをそでにせくかな 隠
作者:しなの鎌倉初期の女流歌人祝部允仲の娘。後鳥羽院の女房。源家長の妻。
読み:はるかなるいわのはざまにひとりいてひとめおもわでものおもわばや
意味:遠く人里に離れた岩の間に独りでいて、人目を気にしないであの人を思って涙を流したいものです
作者:さいぎょう1118~1190俗名佐藤義清23歳で出家諸国を行脚。
備考:山家集では、題は「恋」。
西行物語、八代集抄、
読み:かずならぬこころのとがになしはててしらせでこそはみをもうらみめ
意味;あの人への恋心を、つまらない自分の罪としないで、あの人に私の想いを知らせてから自分自身を恨みましょう。
作者;さいぎょう1118~1190俗名佐藤義清23歳で出家諸国を行脚。
備考:山家集では、題は「恋」
西行物語
読み:くさふかきなつのわけゆくさおしかのねをこそたてねつゆぞこぼるる 隠
意味:草が深い夏野を分けて行く牡鹿が声を出さないが露が零れるので分かるように私の忍ぶ恋も声に出して泣かないが、つい涙が零れ落ちるので知られてしまいます
作者;藤原良経ふじわらのよしつね1169~1206關白九條兼實の子。後京極殿と呼ばれた。新古今和歌集に関与
備考:水無瀬恋十五首歌合
常縁原撰本新古今和歌集聞書、 新古今和歌集抜抄、 新古今抜書抄、新古今和歌集抄出聞書(陽明文庫)
平成27年8月7日 壱