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謡曲 女郎花

女  郎  花

                    四番目物 執心男物 作者不明

九州松浦の僧が岩清水八幡に参詣の為、男山の麓の野辺に来て、咲き乱れる草花の中で女郎花に心引かれて一本折ろうとしたところ、老人が現れ、女郎花にまつわる古歌を引いて話しているうちに老人の心も和み花を折る事を許し、岩清水八幡に案内する。老人の帰りがけに女郎花と男山の謂れを僧が問うと、男塚と女塚に案内し、自分はこの塚の小野頼風だと告げ、消える。土地の者に僧が聞くと、頼風の妻の亡霊が女郎花になった物語を語り、供養を勧める。深夜読経する僧の前に頼風夫婦が現れ、頼風は八幡山の人で、女は都の者だったが、女はしばらく訪れぬ夫を心変わりと恨み、放生川に身を投げた。頼風は亡骸を埋め塚から女郎花が生え、近づくと恨む風情でなびき退いたので、後を追って入水したと語り、今なお地獄で苦しんでいるので、回向を頼み消えていった。

 

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シテ なふ/\其花な折給ひそ、華の色は蒸せる栗のごとし、俗呼ばって女郎とす、戯れに名を聞いてだに偕老を契るといへり、まいてやこれは男山の、名を得て咲ける女郎花の、多かる花に取分て、など情なく手折り給ふ、あら心なの旅人やな
ワキ 扨御身は如何なる人にてましませば、是程咲亂れたる女郎花をば惜み給ふぞ 
シテ 惜しみ申こそ理りなれ、此野邊の花守にて候
ワキ 縦花守にてもましませ、御覽候へ出家の身なれば、佛に手向と思しめし一本御許し候へかし
シテ 實々出家の御身なれば、佛に手向と思ふべけれども、彼菅原の神木にも折らで手向よと、其外古き歌にも、折り取らば手ぶさに穢る立てながら、三世の佛に花奉るなどと候へば、殊更出家の御身こそ、なをしも惜しみ給ふべけれ
ワキ 左樣に古き歌をば引かば、何とて僧正遍昭は、名に愛でて折れる計ぞ女郎花とは詠み給ひけるぞ
シテ いやさればこそ我落ちにきと人に語るなと、深く忍ぶの摺衣の、女郎と契る草の枕を、ならべし迄は疑ひなければ、其御譬へを引給はゞ、出家の身にては御誤り。
ワキ か樣に聞けば戯れながら、色香に愛づる花心、とかく申に由ぞなき、暇申て歸るとて、もと來し道に行過ぐる
シテ あふやさしくも所の古歌をば知ろしめたり、女郎花憂しと見つつぞ行過る、男山にし立てりと思へば。
同 やさしの旅人や、花は主ある女郎華、由知る人の名に愛でて、許し申也、一もと折らせ給へや。
同 なまめき立てる女郎花、なまめき立てる女郎花、うしろめたくや思ふらん、女郎と書ける花の名に、誰偕老を契りけん、彼邯鄲の假枕、夢は五十のあはれ世の、例も誠なるべしや、例も誠なるべしや

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菅原の神木にも折らで

第十九 神祇歌 1853 太宰府天満宮

この歌は建久二年の春の頃筑紫に罷りけるものの安樂寺の梅を折りて侍りける夜の夢に見えけるとなる

なさけなく折る人つらしわが宿のあるじ忘れぬ梅の立枝を

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ワキ 一夜臥す、男鹿の角の塚の草、男鹿の角の塚の草、陰より見えし亡魂を、とぶらふ法の聲立てて
南無幽霊出離生死頓證菩提

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男鹿の角の塚の

第十五 恋歌五 1375 柿本人麻呂

題知らず

夏草の露わけごろも着もせぬになどわが袖のかわくときなき

 

写真は

石清水八幡宮


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