手鑑(中村記念美術館蔵) 後鳥羽院宸筆 新古今和歌集 水無瀬切 重要文化財
伊勢の月よミ能やしろ尓まい里て
月をミてよ免る
さや可なるわし能堂可ねのくもゐよ理
可遣やハらくる川きよミ能もり
神祇哥とてよみ侍りける
前大僧正慈円
や者らくるひ可利尓あまる可遣なれや
い素ゝか者ら能あき能よの月
現代仮名 新字体 濁点入り
(西行法師)
伊勢の月よみのやしろにまいりて
月をみてよめる
さやかなるわしのたかねのくもゐより
かげやはらぐるつきよみのもり
神祇歌とてよみ侍りける
前大僧正慈円
やはらぐるひかりにあまるかげなれや
いすゝがはらのあきのよの月
意訳
第十九 神祇歌 1882
伊勢の月読の社に参って月を見て詠んだ (西行法師)
仏が法華経を説いた霊鷲山の雲の中から、輝く仏の慈悲のさやかな光りのようなやわらかな月光が、この月読の宮の森へ差し込んできます。
1883 神祇歌というので詠みました。
和らいでいる光の余光なのだろうか。五十鈴川の瓦の秋の夜の月は。
金沢市立中村記念美術館 企画展「館蔵名品百選」にて展示。
期間:平成26年6月1日(日)〜8月31日(日)
※7月17日(木)休館
ただし、7月17日に展示替えの際、手鑑は、別葉にするとのこと。
宸筆かどうかは不明とのことであるが、後鳥羽院自ら筆を取る必要はなく、宮中の誰かが書いたものと推察。しかし、新古今和歌集は、歌を沢山入れ替えたので、多くの異本があるが、これは後鳥羽院の手元にあったと推察されることから、オリジナルに最も近いもの。
一見の価値は十分あります。他の藤原定家真筆、雪舟、仁清、狩野探幽など名品ぞろい。是非鑑賞なさっては。