前田家本 方丈記 大火4 取り出づるに及ばず。七珎万宝さながら灰燼となりにき。
るにをよはす。七珎万寶さながら 灰燼となりにき。そのついゑ いくそはくそ。このたひ公卿の 家十六やけたり。まして其ほか いゑ/\かすをつくすにおよはす。 すへてみやこのうち三分かいちにを よへりとそ。男女しぬる物数千 人。牛馬のたくひへんさいをし らす。人のいとなみみなおろかなる (取り出づ) るに及ばず。 七珎万寶さながら灰燼となりにき。 その費ゑ、幾十許ぞ。 この度公卿の家十六焼けたり。...
View Article前田家本 方丈記 辻風3 風に乱るゝが如し
るゝかことし。塵をけふりのこ とくふきたてたれはすへてめ もみえす。おひたゝしくなりと よむをとにものいふこゑもきこ えす。かの地獄の業のかせなりとも かはかりにはとそおほゆる。いゑ の損亡せるのみにあらす。これを とりつくろふあひたに身をそ こなひかたはつける人かすも (風に乱) るゝが如し。 塵を煙の如く吹き立てたれば、全て目も見えず。 夥しく鳴り響む音に物言ふ声も聞こえず。...
View Article前田家本 方丈記 日野の庵1 今日野山の奥に
やまのおくにあとをかくしてのち ひんかしに三尺あまりのひさし をさしてしはおりくふるよす かとす。みなみに竹のつりたな をしてそのにしにあかたなを つくれり。きたによりてゑさ うをあんちしそはに普賢を かけまへに法花経をおけり。ひ んかしのきはにわらひのほとろを (比叡の) 山の奥に跡を隠して後、東に三尺余りの廂をさして、芝折くぶる縁とす。 南に竹の吊り棚をしてその西に閼伽棚を作れり。...
View Article前田家本 方丈記 日野の庵2 蕨のほどろを敷き
しきてよるのゆかとす南西に たけのたなをかまへてくろき かはこ三かうをゝけり。すなはち 和哥管弦往生要集こときの抄 物をいれたり。かたはらにことひはを の/\一張をたつ。いはゆるおりこ とつき琵琶これなり。かりのい ほりのありやうかくのことし。その ところのありさまをいはゝみな (蕨の斑を) 敷きて夜の床とす。 南西に竹の棚を構へて、黒き皮籠三合を置けり。...
View Article前田家本 方丈記 日野の庵3 南に筧あり
みにかけひありいはをたてゝ みすをためたり。はやしのきちか けれはつまきをひろふにともし からす。名をとやまといふまさきの かつらあとをうつめり。たにし けゝれと西はれたり。觀念のた よりなきにしもあらす。春 ふしなみをみる。紫雲のことく して西方におふ。夏はほととき (南) に筧あり。 岩を立てて、水を溜めたり。 林の木近ければ、爪木を拾ふに乏しからず。 名を外山といふ。 正木の葛、跡を埋めり。...
View Article前田家本 方丈記 日野の庵4 夏は郭公を聞く
すをきく。かたらふことにしての やまちをちきる。あきはひく らしのこゑみゝにみてり。うつせ みのよをかなしふかときこゆ。冬 は雪をあはれむ。つもりきゆる ありさま罪業にたとへつへし。 もし念佛ものうく讀経まめ ならぬときはみつからやすみみ つからおこたる。さまたくる人も (郭公) をきく。 語らふ毎に死出の山路を契る。 秋は蜩の声耳に満てり。 空蝉の世を悲しぶかと聞こゆ。 冬は雪を哀れむ。...
View Article前田家本 方丈記 時に建暦の二年 貧賤の報の自ら悩ますか
やますか。はたまた妄心のいたり 狂せるか。その時心さらにこたふる ことなし。たゝかたはらに舌根 をやとひて不惜のあみたふ両三返 をまうしてやみぬ。于時建暦 のふたとせやよひのつこもりの ころ桑門蓮胤とやまのいほり …してこれをしるす。 勍雲 (自ら) 悩ますか。 将又、妄心の至り狂せるか。 その時、心更に答ふる事無し。 只、傍らに舌根をやとひて阿弥陀ふ両三返を申して止みぬ。...
View Article前田家本 方丈記 今様1 思へばこの世は
おもへはこの世は程も なし 栄花は○な是 春の夢 名利のこころを いとひつゝ一心に 弥陀を念す○ し 思へばこの世は程も無し 栄花は皆是春の夢 名利のこころを厭ひつつ 一心に弥陀を念ずべし 風葉のすかたを観 すれは秋のはやしに 鹿そすむ 草露のいのちを かなし○は野原の よもきに月...
View Article前田家本 方丈記 今様2 例ひ千秋を送るとも
たとひ千秋をゝくるとも 歳月程なくすき やす し いは○や老少不定 なり いつをいつかと たのむ へき 例ひ千秋を送るとも 歳月程無く過ぎ易し 況や老少不定也 何時を何時かと頼むべき 時光程なくうつりき て 五更のそらにそ成 に ける 念々 無常のわか...
View Article前田家本 方丈記 今様3 長夜の眠り
長夜の○ふり○○ さめ五○○夢ほと ○ きて しつかにこの世を 観するれはわつかに 刹那のほ○ 長夜の眠り○さめ 五○○ゆめほど○きて 静かにこの世を観ずれば 刹那の○ 人○有為の樂は 雷光朝露の ことく也 須○に三途○ ○る○長時の告 いか○せ ○ 人○有為の樂は 雷光朝露の如く也 須○に三途○...
View Article前田家本 方丈記 今様4 日もいたづらに
……も…つ…き ふ…… 見 こよひむなしく あけなはおきて 何…… ……… 日も徒らに暮れてゆき 伏して多くの夢を見る 今宵空しく明けなば 起きて何をか営まし ※前田本方丈記解説 前田家育徳財団を加筆
View Article前田家本 方丈記 日野の庵0 地を占めて造らず
つくらすつちゐをくみうちおほ ひをふきてつきめことにかけか ねをかけたり。もしこころにかなはぬ 事あらはやすくほかへうつさんか ためなり。そのあらためつくると きいくはくのわつらひかある。つ むところわつかに二りやうなり。 くるまのちからをむくうほと には他の用途いらす。いまひえの (地を占めて) 造らず。 土居を組み、内覆ひを葺きて、継ぎ目毎に、掛け金を掛けたり。...
View Article前田家本 閑居友 建礼門女院御いほりにしのびし御幸の事
文治二年ノ春建礼門女院世をすてゝこもりゐ させたまへるもとにいかさまにしていまそかるら むとて夜おこめてしのひ乃御幸ありけり。そ乃 をハします所にいと(あやし)けなるあま乃とし おひたるありけるに女院ハいつくにおハしますそ とゝはせたまひけれはこのうゑ乃山にはなつミに いらせたまひぬといらゑけり。いとあハれにきこし めしていかてか世をすつといひなからミつから...
View Article前田家本 閑居友2 憂き世を出でて佛の御国に
いてゝ佛乃みくにゝむまれんとねか者ん人いかてか すつとならはなをさり乃事侍へきさき乃よに かゝる御おこなひ乃なかりけるゆへにこそかゝる うきめを御らんつる事にて侍るらめ。といひけり。 御ともの人ゝもすかたよりハあ者れなるものいひ かな。といひしろひまた院もあハれにおほし めしたりさ○○。御すまゐを御らんしま者 しけれハ一まにハあミた乃三尊たてまいらせて...
View Article前田家本 閑居友3 誰も哀れと思されけん
たれもあ者れとやおほされけん。あるはなおしの そてをかほにあ○あるはおもてをかへにむ可へて おの/\ことはすくなになりておハしけるほとに 山乃うへよりあま二人おりたりけり。ひとりハ ハなこをもちひとりハつまきをひろいもちたり。 やう/\ち可つき給をミれハ者なこもちたるハ女院 にてものしたまひけり。つま木もちたるは昔ち かくめしつ可者せ給ける人なりけり。お乃/\な...
View Article前田家本 閑居友4 煙立ち昇りて行く先も涙に隠れ塞がり
けふりたち乃ほりてゆくさきもなミたに可くれふた かりいつれ可山河ともわ可れす八しま乃さとにま可 りたりし可はそ乃可ミ見しなおしなと乃 やうにおほえてゆミやのな可にさゝけもちたる物 なし。さてこゝも可なふましとて八しまを いてゝゆくゑもしらぬうミにう可みておきふし はなミたにしつミ侍しほとにふねにをそろ志 きも乃とも乃りうちり侍し可は今上おハ人乃 いたきたてまつりて海にいりたまひき。人々或は...
View Article前田家本 閑居友5 今上を抱き奉りて先づは伊勢大神宮を
今上をいたきたてまつりてまつハ伊勢大神宮を お可ませまいらせつきに西方をゝかミていらせ給しに 我も入なんとし侍し可ハ女人をハむ可しより ころす事なし。かまへて乃こりとゝまりてい可 なるさまにても後乃よをとふらひ給へし。をやこ 乃するとふらひハ可ならす可なふ事也。たれ可は 今上乃後世をも我後世をもとふら者ん。とあり しに今上ハなに心もなくふりわけ可ミに見つらゆ...
View Article前田家本 閑居友6 涙に萎れつつ帰りけるとなん
しをれつゝ返りけるとなん。これはか乃院の御あた り乃事をしるせる文に侍き。なにとなくミす くし可たくて可き乃せ侍なるへし。 萎れつゝ、返りけるとなん。 これは、彼の院の御辺りの事を記せる文に侍き。 何と無く、見過ごし難くて、書き載せ侍なるべし。
View Article狩野探幽三幅対の騎乗図の和歌の考察 金沢市立中村記念美術館 館蔵名品百選
金沢市立中村記念美術館 館蔵名品百選に手鑑(後鳥羽院宸記他)を見に行く。 後鳥羽院の宸筆の新古今和歌集 水無瀬切は、「前大僧正慈円」くらいしか読めなかった。この手鑑は4年ぶりの公開ということ。3年前に問い合わせしたところ、つい最近公開したので、しばらくは無いとのことだった。3年間待ってやっと見ることが出来た。新古今和歌集を学ぶものとして、何時までも見ていたい衝動にかられた。...
View Article手鑑(中村記念美術館蔵) 後鳥羽院宸筆 新古今和歌集
手鑑(中村記念美術館蔵) 後鳥羽院宸筆 新古今和歌集 水無瀬切 重要文化財 伊勢の月よミ能やしろ尓まい里て 月をミてよ免る さや可なるわし能堂可ねのくもゐよ理 可遣やハらくる川きよミ能もり 神祇哥とてよみ侍りける 前大僧正慈円 や者らくるひ可利尓あまる可遣なれや い素ゝか者ら能あき能よの月 現代仮名 新字体 濁点入り...
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