(勇士菅沼氏曲水子の)
伯父になんはべりしを今は八年斗
むかしになりてまさに幻住老人の名を
のみ残せり。予又市中を去る事
十年斗にして五十年やゝちかき
身は蓑虫のみのを失ひ蝸牛
家を離て奥羽象潟の暑き日
に面をこがし高すなこあゆみ
くるしき北海の荒磯にきびすを
破りて今歳湖水の波に漂鳰の
浮巣の流れとゞまるべき葦の一本
の陰たのもしく軒端葺あらた
め垣ねゆひそへなどして卯月の
初
いとかりそめに入りし山のやがて出
でじとさへ思ひそみぬ。さすがに春の
名残も遠からず、つつじ咲き残り、
山藤松に懸て、時鳥しば/"\過ぐる