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Channel: 新古今和歌集の部屋
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九条良経

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藤原良経ふじわらのよしつね1169~1206關白九條兼實の子。後京極殿と呼ばれた。新古今和歌集に関与

春歌上
春立つこころをよみ侍りける
みよし野は山もかすみて白雪のふりにし里に春は來にけり
家の百首歌合に余寒のこころを
空はなほかすみもやらず風冴えて雪げにくもる春の夜の月
歸雁を
忘るなよたのむの澤をたつ雁も稻葉の風のあきのゆふぐれ
百首歌奉りし時
歸る雁いまはのこころありあけに月と花との名こそ惜しけれ
百首歌奉りし時
ときはなる山の岩根にむす苔の染めぬみどりに春雨ぞ降る

春歌下
返し
さそはれぬ人のためとやのこりけむ明日よりさきの花の白雪
殘春のこころを
吉野山花のふるさとあと絶えてむなしき枝にはるかぜぞ吹く
百首歌奉りし時
初瀬山うつろう花に春暮れてまがひし雲ぞ峯にのこれる
百首歌奉りし時
明日よりは志賀の花園まれにだに誰かは訪はむ春のふるさと

夏歌
千五百番歌合
有明のつれなく見えし月は出でぬ山郭公待つ夜ながらに
五十首歌人々によませ侍りける時夏歌とてよみ侍りける
うちしめりあやめぞかをる郭公啼くやさつきの雨のゆふぐれ
釋阿に九十賀給わせ侍りし時屏風に五月雨を
小山田にひくしめ繩のうちはへて朽ちやしぬらむ五月雨の頃
百首歌奉りし時
いさり火の昔の光ほの見えてあしやの里に飛ぶほたるかな
家百首歌合に
かさねても涼しかりけり夏衣うすきたもとにやどる月かげ
百首歌奉りし時
秋近きけしきの森に鳴く蝉のなみだの露や下葉染むらむ
五十首歌奉りし時
螢飛ぶ野澤にしげるあしの根の夜な夜なしたにかよふ秋風

秋歌上
百首歌奉りし時
荻の葉に吹けば嵐の秋なるを待ちける夜半のさをしかの聲
百首歌奉りし時
おしなべて思ひしことのかずかずになほ色まさる秋の夕暮
題しらず
暮れかかるむなしき空の秋を見ておぼえずたまる袖の露かな
家に百首歌よみ侍りけるに
物おもはでかかる露やは袖に置くながめてけりな秋の夕暮
五十首歌奉りし時月前草花
故郷のもとあらのこ萩咲きしより夜な夜な庭の月ぞうつろふ
建仁元年三月歌合に山家秋月といふことを
時しもあれふるさと人はおともせでみ山の月に秋風ぞ吹く
八月十五夜和歌所歌合に深山月といふことを
深からぬ外山の庵のねざめだにさぞな木の間の月はさびしき
五十首歌奉りし時
雲はみなはらひはてたる秋風を松にのこして月をみるかな
家に月五十首歌よませ侍りし時
月だにもなぐさめがたき秋の夜のこころも知らぬ松の風かな
五十首歌奉りし時野徑月
行くすゑは空もひとつのむさし野に草の原より出づる月かげ

秋歌下
百首歌よみ侍りけるに
たぐへくる松の嵐やたゆむらむおのえにかへるさを鹿の聲
和歌所歌合に月のもとに衣をうつといふことを
里は荒れて月やあらぬと恨みてもたれ淺茅生に衣打つらむ
百首歌奉りし時
きりぎりす鳴くや霜夜のさむしろに衣かたしきひとりかも寝む
左大將に侍りける時家に百首歌合し侍りけるに柞をよみ侍りける
柞原しづくも色やかはるらむ森のしたくさ秋ふけにけり
家に百首歌合し侍りける時
立田姫いまはのころの秋かぜにしぐれをいそぐ人の袖かな

冬歌
百首歌奉りし時
笹の葉はみ山もさやにうちそよぎ氷れる霜を吹くあらしかな
題しらず
枕にも袖にも涙つららゐてむすばぬ夢をとふあらしかな
五十首歌奉りし時
水上やたえだえこほる岩間よりきよたき川にのこるしら波
百首歌奉りし時
かたしきの袖の氷もむすぼほれとけて寝ぬ夜の夢ぞみじかき
題しらず
いそのかみ布留野のをざさ霜を經て一よばかりに殘る年かな

賀歌
京極殿にて初めて人々歌つかうまつりしに松有春色といふことをよみ侍りし
おしなべて木のめもはるの淺綠松にぞ千世の色はこもれる
百首歌奉りし時
敷島ややまとしまねも神代より君がためとやかため置きけむ
千五百番歌合に
濡れてほす玉ぐしの葉の露霜に天照るひかり幾世經ぬらむ
家に歌合し侍りけるに春の祝のこころをよみ侍りける
春日山みやこの南しかぞおもふ北の藤なみ春にあへとは

哀傷歌
返し
見し夢にやがてまぎれぬ吾身こそ問はるる今日もまづ悲しけれ

羇旅歌
旅歌とてよめる
もろともに出でし空こそ忘られぬ都の山のありあけの月
和歌所月十首歌合のついでに月前旅といへるこころを人々つかうまつりしに
忘れじと契りて出でし面影は見ゆらむものをふるさとの月

戀歌一
家に歌合し侍りけるに夏戀のこころを
空蝉の鳴く音やよそにもりの露ほしあへぬ袖を人のとふまで
百首歌奉りしに
かぢをたえ由良の湊による舟のたよりも知らぬ沖つしほ風
和歌所の歌合に忍戀をよめる
難波人いかなる江にか朽ちはてむ逢ふ事なみにみをつくしつつ

戀歌二
百首歌奉りし時戀歌
戀をのみすまの浦人藻鹽垂れほしあへぬ袖のはてを知らばや
左大將に侍りける時家に百首歌合し侍りけるに忍戀のこころを
洩らすなよ雲ゐるみねの初しぐれ木の葉は下に色かはるとも
水無瀬の戀十五首歌合に夏戀を
草ふかき夏野わけ行くさを鹿の音をこそ立てね露ぞこぼるる
水無瀬戀十五首歌合に
山がつの麻のさ衣をさをあらみあはで月日やすぎ葺けるいほ
千五百番歌合に
歎かずよいまはたおなじ名取川瀬々の埋木朽ちはてぬとも
千五百番歌合に
身に添へるその面影も消えななむ夢なりけりと忘るばかりに
家に百首歌合し侍りけるに祈戀といへるこころを
幾夜われ波にしをれて貴船川そでに玉散るもの思ふらむ

戀歌三
後朝の戀のこころを
又も來む秋をたのむの雁だにもなきてぞ歸る春のあけぼの
水無瀬にて戀十五首歌合に夕戀といへるこころを
何故と思ひも入れぬ夕べだに待ち出でしものを山の端の月

戀歌四
題しらず
思ひ出でて夜な夜な月に尋ねずは待てと契りし中や絶えなむ
八月十五夜和歌所にて月前戀といふことを
わくらばに待ちつる宵もふけにけりさやは契りし山の端の月
百首歌奉りし時
いはざりき今來むまでの空の雲月日へだててもの思へとは
家に百首歌合し侍りけるに
思ひかねうちぬる宵もありなまし吹きだにすさめ庭の松風
家百首歌合に
いつも聞くものとや人の思ふらむ來ぬ夕暮のまつかぜの聲

雜歌上
百首歌奉りし時
月見ばといひしばかりの人は來でまきの戸たたく庭のまつ風

雜歌中
天の河原を過ぐとてむかし聞く天の河原を尋ね來てあとなき水をながむばかりぞ
百首歌奉りしに山家のこころを
忘れじの人だに訪はぬ山路かな櫻は雪に降りかはれども
百首歌よみ侍りけるに
ふる里はあさぢがすゑになりはてて月に殘れる人のおもかげ

雜歌下
千五百番歌合に
舟のうち波の下にぞ老いにけるあまのしわざも暇なの世や
千五百番歌合に
浮き沈み來む世はさてもいかにぞと心に問ひて答へかねぬる
題しらず
われながら心のはてを知らぬかな捨てられぬ世のまた厭はしき
題しらず
おしかへし物を思ふは苦しきに知らずがほにて世をや過ぎまし

神祇歌
大將に侍りける時勅使にて大神宮に詣でてよみ侍りける
神風や御裳裾川のそのかみに契りしことのすゑをたがふな

釋敎歌
家に百首歌よみ侍りける時十界のこころをよみ侍りけるに縁覺のこころを
奧山にひとりうき世は悟りにき常なき色を風にながめて


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