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新古今和歌集 隠岐本識語

新古今和謌集        隠岐本御識語

いまこの新古今【集】は、いにし元久のころほひ、和謌所のともがらにおほせて、ふるきいまの哥をあつめしめて、そのうへみづからえらびさだめてよりこのかた、いへ/\のもてあそびものとして、みそぢあまりのはるあきをすぎたれば、いまさらあらたむべきにはあらねども、しずかにこれをみるに、おもひおもひの風情、ふるきもあたらしきもわきがたく、しな/"\のよみ人、たかきいやしきもすてがたくして、あつめたるところの哥ふたちゞなり。

かずのおおほかるにつけてはうたごとにいうなるにしもあらず。そのうち、みづからが哥をいれたること三十首にあまれり。みちにふける思ふかしといふとも、いかでか集のやつれをかへりみざるべき。

おほよそたまのうてな、かぜやはらかなりしむかしは、なほ野邊のくさしげきことわざにもまぎれき。いさごのかど、月しづかなるいまは、かへりてもりのこずゑふかきいろをわきまへつべし。

むかしより集を抄することは、そのあとなきにしもあらざれば、すべからくこれを抄しいだすべしといへども、攝政太政大臣に勅して假名の序をたてまつらしめたりき。すなはちこの集の栓とす。しかるを抄せしめば、もとの序をかよはしもちゐるべきにあらず。これによりてすべての哥ないし愚詠のかずばかりをあらためなほす。

しかのみならず、まき/\の哥のなかかさねて千哥むもゝちをえらびて、はたまきとす。たちまちにもとの集をすつべきにはあらねども、さらにあらためみがけるはすぐれたるべし。

あまのうきはしのむかしをききわたり、やへがきのくものいろにそまむともがらは、これをふかきまどにひらきつたへて、はるかなる世にのこせとなり。


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